「未来を予測することなんてできない」。賢明なビジネスマンならそう思うだろう。だが、スマートフォンや人工知能(AI)、遺伝子工学など世の中を大きく変える科学技術(テクノロジー)は突如として目の前に現れるわけではない。その前には必ず予兆、つまり“シグナル”が出されている。そう提唱するのが未来学者のエイミー・ウェブ氏である。今回、『シグナル:未来学者が教える予測の技術』で未来を予測する体系的なメソッドをまとめたウェブ氏にその術を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)

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未来学者が語るのは
「空飛ぶ車」ではなく「燃料」

――そもそも未来学者(フューチャーリスト)というのは日本人になじみがありませんが、どのような仕事なのでしょうか。

 たくさんのデータを使うことが特徴です。定性データや定量データを扱って、そこから今後のトレンドを予測します。さらにモデルを作り、シナリオを描きます。

 そのため、未来予測とはデータに基づくものであり、アナリストに近いかもしれません。ただし、アナリストのように過去を分析するのではなく、未来が対象になります。

未来予測に欠かせない「社会の片隅にあるシグナル」の探し方エイミー・ウェブ氏

──SF作家とは違うのですか。

 違います。私の仕事はSF作家と比べると「つまらない」仕事ですよ(笑)。例を挙げましょう。

 以前、日本の航空会社のトップとお話ししたときのことです。そこでは「航空の未来」がテーマになりました。もしこれがSF作家であれば、「空飛ぶ車」の話でもすれば盛り上がるかもしれません。

 ですが、私たちが扱っているのは実践的、実利的、現実的なものです。ですから、航空会社の未来を考えるには、航空機の燃料について語らねばなりません。日本は、中東の石油に依存した燃料を使っていますから、それ以外の代替エネルギーがないかを話したのです。

 私の主な仕事は「未来学」を基に世界のクライントにコンサルティングすることです。映画や米国で人気ドラマシリーズのお手伝いもしましたが、創作ではなく、あくまで現実的、実践的な仕事でした。