店舗の営業時間が長く、長時間労働が常態化で人手不足となっている飲食業。時間給を上げて人を確保しても、過剰な労働が原因ですぐに辞めてしまう。今回は社長がお気に入りのバイト学生に、非番でも出勤させようとストーカー行為に走ったために、警察沙汰になった事例を紹介したい。(社会保険労務士 木村政美)
洋風居酒屋を開業して10年。諸事情のため5年前に法人化する。社員はA社長1人とアルバイトが20人程。近くには総合大学があり、バイトはそこの学生が大半を占めている。
<登場人物>
A:居酒屋の経営者であり、店内ではシェフとして采配を振るっている。30代後半
B:アルバイト。大学3年生
C・D:アルバイト。2人とも30歳位。開業当時から勤務している
E:A社長の大学時代の同級生で社労士
高時給バイトにつられて入るも
大半は半年以内に辞めてしまう
A(社長)は大学時代に飲食店でバイトを経験し、卒業後の数年間は複数の飲食店で料理の腕を磨いてきた。そして10年前に念願の洋風居酒屋を開業。社長の独創的でかつ上手い料理と手頃な値段が好評で、売り上げは開業以来、順調に推移している。
とはいえ、社長はとても大きな悩みを抱えていた。それは店で雇っているバイトがすぐに辞めてしまうことである。
「おかしいな。時給は他よりも高いのに……」
店のバイトの時給は他と比較しても平均で200円は高い。その高時給バイトにつられて希望者が集まるが、ほとんどは3ヵ月、長くても半年以内で辞めてしまう。そのため毎日が人手不足なのだ。残されたバイトの仕事はどんどん過酷になり、それが原因で辞めていくの繰り返しで、ますます悪循環に陥っていた。