政府は、12月10日の閣議で、2012年度税制改正大鋼を決定した。社会保障・税の一体改革に伴う消費税の引き上げ問題を強く意識して、利害調整が難しい配偶者控除やたばこ税見直しなど、重要な案件はすべて先送りされた。好意的に解釈すれば、「大事の前の小事は止むなし」という発想であろう。しかし、これでもし消費税の引き上げがうやむやにされるようなことになれば、野田内閣の求心力は一気に低下するのではないか。今国会における法案成立率の低さや、消費税引き上げに対する民主党内の反対勢力の動向などを勘案すると、野田総理は、引き続き胸突き八丁の難しい政権運営を余儀なくされるものと思われる。
短期的には消費税の引き上げが現実するかどうかが焦点
野田総理は、年内に消費税の引き上げ幅(5%→10%)と実施時期を明らかにして、新春の通常国会に上程すると繰り返し言明している。そのこと自体は、政局的な発想を除外すれば、おそらく自民党を含め、市民のコンセンサスに近いものがあると思われる。
以前にも、このコラムで指摘したが、ギリシャ問題に象徴されるユーロの混迷ぶりを見るにつけても、わが国の財政問題をこのまま放置していいと考える市民は、おそらくそう多くはないであろう。
わが国は他の先進国と比較しても、歳入のうちの税収(今年度の当初予算では約41兆円)と歳出(同じく約92兆円)のバランスが著しく崩れており、膨大な債務(GDPの212.7%、OECD “Economic Outlook 89”(2011年6月))の返済問題を別にしても、税収増を図る以外に、収支を均衡させる方法がないことは明らかだからである。その意味で、消費税の引き上げが実現するかどうかは、新年度のわが国の政治動向を占ううえでも大きな節目となるものと考える。