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出口治明の提言:日本の優先順位
【第29回】 2011年11月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

国語ではなく算数で考えることが
問題解決の近道

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 最近、講演に呼ばれる機会が増えた。マイケル・サンデル教授の白熱教室ではないが、せっかくの機会なので、聴衆の皆さんにもできるだけ「国語ではなく、算数で」考えてもらおうと思って、会場に質問を投げかけては挙手してもらうよう努めている。

『景気が良くなければ、税金が増えるので、増税は必要ない』
というテーゼは正しいか

 「『景気が良くなれば、法人税や所得税などの税収が増えるので、まず景気対策が必要であって、増税は必要がない、あるいは増税はそのあとで考えればいい』という意見について、どう思いますか。この意見に賛成の人、挙手してください」という質問を投げかけると、ほとんどの会場で大半の人が手を挙げる。

 さもありなんと思う。国語で考えれば、上記の意見は一般論としては正しいように思われるからだ。

 そこで、続いて次の質問を投げかける。「現在の政府(野田政権)が、戦後、最優秀の政府だと仮定して、次々と実効性の高い経済対策を実行に移し、わが国の景気が相当程度回復して、再び高度成長軌道に乗ったと仮定してください。そこで質問です。バブルのピークであった1989年、すなわち、日経平均株価が4万円直前まで上昇し、東京の地価でアメリカ全土が購入できた89年を上回ることができると思う人は挙手してください」と。

 すると、手を挙げる人は誰もいない。すなわち、ほとんどの人は、仮にわが国の景気が良くなったとしても、バブル期を再び超えることはあり得ないと達観しているようなのだ。

 「バブルのピーク時の税収を知っている人はいますか?(89年の好景気を反映した)90年が60兆円で、実は60兆円を超えたのは、実はただの一回きりです。要するに、皆さんは、バブル期を超える税収を得ることは不可能だと考えているわけですね。では、好景気が戻ってきたと仮定した時の、わが国の税収はいくらくらいが期待できますか?」このように問いかけると、現在の税収41兆円に対して、最大でも50兆円~55兆円くらいではないかという感触が会場から寄せられる。

 すなわち、いくらわが国の景気が回復したとしても、そのことによって得られる税収は、最大値でも50兆円~55兆円くらいではないかというのが、市民の普通の感覚なのだ。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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