三菱重工の商船事業、大赤字からのリストラ完了で囁かれる次の再編三菱重工の長崎造船所香焼工場は7隻同時に進むLNG船の建造に沸くが、今後、同船の商談減少で操業は落ち込む見込みだ Photo by Mieko Arai

 大型客船の工事の混乱で、2719億円にも上る巨額損失を計上した三菱重工業の商船事業。激しい市況の変化と激化する競争環境を乗り切るため、この事業で行っていた構造改革が完了しようとしている。

 2018年1月に、造船などの事業会社である三菱造船と三菱重工海洋鉄構(海洋鉄構)を新設。三菱重工本体の船舶・海洋事業部門も含め、商船事業の機能を全てこの2社に集約する。

 三菱造船では官公庁船、乗客志向型フェリーの設計・建造や、LNG(液化天然ガス)船の設計などを、海洋鉄構では大型船の建造や、防波堤といった大型海洋鉄構構造物の設計・建造などを行っていくという。

「一つにまとめてしまうと戦略がぼやけてしまう」。12月8日、一時あられがちらついた長崎造船所香焼工場で、大倉浩治・三菱重工船舶・海洋事業部長は客船2社体制を敷く理由をこう説明した。

 最先端技術に開発費を投じながら設計も手掛ける三菱造船と、船の建造コストの低減に強みを出すべき海洋鉄構では、目指す方向が違うというのだ。

 2社の船出を前に、「20~21年には、2社の合計売上高を現在の1000億円規模から1500億円に持っていきたい」と意気込む大倉氏。一方、社内外では早くも不安の声が上がっている。