世代間格差の犯人は「シルバー民主主義」ではなかった

遅々として改革が進まないのは、既得権を守りたい高齢者が政治プロセスを支配しているからだと言われるいわゆる「シルバー民主主義論」。しかし、世代間格差を詳細に分析してみると、それは幻想に過ぎなかった。先日、「シルバー民主主義の政治経済学 世代間対立克服への戦略」(日本経済新聞出版社)を出版した経済企画庁出身のエコノミストで現在、中部圏社会経済研究所で経済分析・応用チームリーダーを務める島澤諭氏に、その根拠をまとめてもらった。

シルバー民主主義では
高齢者は独裁者に他ならない

 日本は、戦後復興期から高度経済成長期を経てバブル期までの人口も経済も右肩上がりの時代から、バブル崩壊以降、それまでとは真逆の人口も経済も右肩下がりの時代へと変貌を遂げてしまった。

 にもかかわらず、その右肩上がりの時代に形成されたシステムを後生大事に墨守し続けている結果、日本の社会や経済の変容と軌を一にして、政府財政や社会保障制度は破綻寸前となっている。

 このように、遅々として改革が進まず先送りが続くのは、既得権を守りたい高齢者が政治プロセスを支配することで、必要な改革の邪魔をしているからだとの指摘が最近勢力を増している。いわゆる、「シルバー民主主義論」である。

 シルバー民主主義批判の代表格である八代尚宏氏は、その著『シルバー民主主義』(中公新書)で、急速な少子高齢化が進む現状にもかかわらず遅々として社会保障制度改革が進まない現状を、「政治家が当面の選挙に勝つために、増える一方の高齢者の既得権を守ろうとする」からだと批判している。