2011年は東日本大震災、円高、ユーロ危機、タイの大洪水と、日本にとっては内外ともに災厄多き年だった。12年はそれ以上に不確実性、不安定性が高まる年となりそうだ、何しろ世界は政治の季節に突入する。1月の台湾総統選に始まり、露、仏、米、韓では大統領選、中国でも政権交代が行われる。北朝鮮情勢も不安材料だ。そうした状況下、12年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々に、アンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。

①二兎を追え:復興と財政再建

日本は復興と財政再建の二兎を追い、<br />世界に先立ち「脱ジャパナイゼーション」の年に<br />――三菱総合研究所 政策経済・研究センター<br />シニアエコノミスト 武田洋子氏たけだ・ようこ
三菱総合研究所 政策経済・研究センター シニアエコノミスト ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了1994年日本銀行入行。日本銀行では海外経済調査、外国為替平衡操作、内外金融市場分析などを担当。2009年三菱総合研究所入社。専門はマクロ経済、国際金融。社会保障審議会年金部会委員、年金財政における経済前提と積立金運用に関する専門委員会委員等。

 2012年は、団塊世代が65歳を超え、貯蓄の取り崩し期を迎える。海外ではソブリンリスクへの投資家の目線が厳しくなっている。こうした中、日本は2012年に2つの課題に取り組む必要があろう。

 第1に震災復興だ。放射性物質の除染を含む復興への道のりは長い。将来も存続可能な都市や産業を創造するグランド・デザイン、柔軟かつ迅速な予算執行、長期にわたり支援する体制が必要だ。第2に財政再建である。ひとたび市場の信認が低下すれば、長期金利が上昇、利払い費増加により財政赤字が拡大することは、欧州の現状をみれば明らかだ。そうなれば復興財源の確保も一層困難となる。第1の復興実現のためにも、財政再建による信認維持は不可欠である。

 2011年は欧米経済の「ジャパナイゼーション(日本化)」が話題となった。2012年は日本が世界に先立って「ジャパナイゼーション」から抜け出し、その定義を塗りかえる年となることを願う。そのためには二兎を追う必要がある。