現在の防災計画の仕組みづくりで
災害から市民を守れるのか?

のぐち かずひこ/1978年東京大工学部航空学科卒業後、三菱総合研究所入社。安全政策研究部長、参与、研究理事を経て、11年12月から現職。専門分野はリスクマネジメント(安全工学、人間工学、危機管理)、科学技術政策。ISOリスクマネジメント関連規格日本代表委員。主な著書として『リスクマネジメント―目標達成を支援するマネジメント技術』(日本規格協会、2009年)等がある。

 東日本大震災から10ヵ月が経とうとしている。今年は復旧の段階から本格復興が始まる再建元年でもある。一方、今の日本では、東日本大震災からの復興のみならず、首都圏直下地震や、東海、東南海、南海地震の三連動等の新たな巨大地震への対応も急務となっている。今度大きな地震に見舞われ国民生活に多大な被害が出ると、その影響は国内に留まらず海外からの日本への信頼は地に落ちてしまう。

 このような状況に陥らないためには、防災の実効性を早急に高める必要がある。しかし、現状をみると東日本大震災から大きなインパクトを受けたことは確かでも、そのインパクトを自分の地域の安全に反映するまでには至っていないように感じられる。

 現在の状況では、実際の避難が困難と思われる自治体―例えば、昼間人口が圧倒的に高齢者が多く、災害発生時に計画通りに避難ができそうにない地域―もある。また、近年避難における自治会の役割の重要性が認識されているが、個人情報の縛りにより要援護者の情報が共有できないでいる自治体も多い。