「ローコスト・オペレーション」は、組織を亡ぼす

 ただし、「ケチ」であることが、私の本旨ではありません。
 むしろ、単なる「ケチ」は組織を壊します。経営状況が悪化すると「ローコスト・オペレーション」と称して、とにかく「経費削減」を徹底することで利益を確保しようとする経営者を見かけます。絞るだけ絞って数字(利益)を生み出そうとするわけですが、これ一辺倒では、組織は必ずレームダック(死に体)に陥ります。

 なぜなら、ローコスト・オペレーションだけでは、縮小再生産にしかならないからです。経営状況が悪化したということは、何らかの理由で事業構造に問題があるということ。その構造を転換することなくして、再び成長軌道に乗せることなどできるはずがありません。それを放置したまま、交際費や出張費など必要不可欠な経費まで絞りすぎると、社員のモチベーションまで下げてしまうことになります。とてもではありませんが、それで組織再生などできるわけがないのです。

 だから、私は「リーン&ストラテジック(Lean & Strategic)」を徹底してきました。「リーン」とは「ぜい肉がなく引き締まった筋肉質」という意味。「ムダなお金は使わない」=「ケチ」ということです。そして、「ストラテジック」とは「戦略的」という意味。つまり、「ケチ」に徹することで、ぜい肉がなく引き締まった健全な組織体を築き上げるとともに、そこで浮いたお金を戦略的な投資に回すということです。重要なのは「リーン」と「ストラテジック」を同居させること。そうすることではじめて、「経営の質」を高め、「持続的成長」を遂げる企業にすることができるのです。