東京電力の中長期の再建策を示す「総合特別事業計画」で、「一時的な公的管理」が検討されている。3月末までに策定される予定で、東電、政府、金融機関などの思惑が交錯した“神経戦”は大詰め段階に入った。政府は国民の納得感を模索するなかで、「債務の株式化」などを検討している。
「東京電力はまだまだ陥落していない。勝俣恒久会長をはじめ、首脳らが経営の自主性に対し、強力な執着心を示したメッセージを放ったものだ」と関係者は語る。メッセージとは、電気料金値上げ方針のことだ。
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昨年12月22日、「東電の国有化」に関する報道が相次ぐなか、政府の認可が不要で全体の6割を占める大口企業向け電気料金を今年4月以降に引き上げると発表した。この発表は当日朝の一部新聞の値上げ報道を受けて、急きょ午前11時から実施になった、ということになっている。枝野幸男経済産業相、原子力損害賠償支援機構の関係者をはじめ、政府関係者に連絡が回ったのは、当日の午前6時以降で「寝耳に水」だった。
しかし、「西澤俊夫社長が会見し、手際がよ過ぎるという印象を受けた。まるで機会をうかがっていたかのようだ」(政府関係者)。事前に漏れて値上げ発表に政府等から横やりが入らないように、機先を制したという動きなのだ。
さらに東電は、政府の認可が必要な家庭向け電気料金についても値上げの方針を示し、西澤社長は「申請は事業者としての義務と権利である」と発言した。
東電、政府、金融機関で
展開される激しい鞘当て
東電は機構とともに3月末までに、中長期の経営再建策となる「総合特別事業計画」をまとめる予定だ。この策定をめぐって、東電、政府(機構)、金融機関などのあいだで激しい鞘当てが繰り広げられている。
東電の値上げ方針発表に対して、政府はすぐに反応した。
枝野経産相は12月27日夜、西澤社長との会談で、総合特別事業計画に向けて「一時的な公的管理を含め、あらゆる可能性を排除しないこと、値上げは電力事業者の権利であるという考えは持たないようにすること、新生東電の姿をわかりやすく盛り込むこと」と、三つの条件を挙げて釘を刺した。「枝野大臣は西澤社長が『値上げは権利』と発言したことに対し、強い不快感を持っていたようだ」(与党関係者)。