2012年1月23日に発売予定の「ストライド メガミステリー2」。果たしてどんな味か?

 商品パッケージには味の説明は一切ない。代わりに大胆なほど大きな「?」マーク。日本クラフトフーズが販売する「食べるまで何の味かわからない」という、何ともユニークなコンセプトのガム「ストライド メガミステリー」が、10代男性を中心とした若年層に人気だ。

 どんな味か。ちょっとした「闇鍋」のような気分で、恐る恐る口に放り込んでみる。ひと噛み目は、何となくグレープフルーツの味がするような。そのうちオレンジ系のフレーバーが、口内に広がる気がする。さらに噛むと、シトラスのような、レモンのようなフレーバーが、次々と存在を主張し始める。

 様々な味の変化が楽しめる。何味かの答えはないので、自由に想像しながら噛む。この体験は実に新鮮だ。

 もともと「ストライド」は、「クロレッツ」や「リカルデント」などガムの大型ブランドを持つ同社が、2010年5月に発売した新ブランドだ。「味と噛み心地が長持ちする」という特異性が反響を呼び、発売開始から2ヵ月で、年間販売目標の1500万個を達成する大ヒットとなった。

「ストライド メガミステリー」は、ブランドの新フレーバーとして翌年の2011年6月に追加された。同社は販売個数を公表していないものの、「予想以上の販売数量を早期に獲得できた」としている。勢いに乗り、2012年1月からは、10代女性のユーザー獲得を目指し、女性が好みそうな濃厚な味わいの「メガミステリー2」を発売する予定だ。

 この謎めいたガムの勝因は、大きく分けて2つだ。1つは、何味かわからない謎を食べながら解くという、「差別化された体験」そのものを売ったことだ。今のような消費者の商品選択眼がシビアな時代では、単に「モノを売る」という発想では、ヒットは難しい。「モノを売る」から脱却し、他の商品にはない「体験を売る」といった機転が重要だ。時代にあった売り方の本質を、「ミステリー」という切り口で非常に上手く押さえた。これが成功の秘訣であろう。

 もう1つは、SNSの活用だ。発売に先駆けて、Facebook上に「ストライド ヤバーランド」と命名された公式ファンページを開設。合わせて、テレビCMの主役をプロアマ問わず募集するキャンペーンも展開し、わずか4週間で6万人を超すファンを獲得した。

 その後も、若者ウケしそうなニュースやネタを切れ目なく発信し、ユーザーの書き込みにも、丁寧に「ツッコミ」を入れている。言葉使いも10代の若者の口調そのもの。インタラクティブなやり取りは、友人同士の会話のように映る。「常に若者と同じ目線で物事を考え、彼らとともにブランドを築き上げようとしている」(同社)という製品開発の思想を、まさに体現する場となっている。現代的なツールを活用した、お客様目線の徹底。これも成功のキーワードだろう。

 実は国内のガム市場では、若者のガム離れなどが原因で、生産金額は2004年の1317億円をピークに、毎年2~3%程度低下し、2010年は1050億円にまで減少している。今までも、1997年のキシリトールガム、2003年のファミリーボトルの発売などで息を吹き返してきた業界だが、最近はそうした大きな起爆剤もなく、低迷が続く。

 差別化された体験やSNS活用の成功は、斜陽傾向を反転させるヒントになるかもしれない。特に「ミステリー」というコンセプトは、ユーザーの購買欲をそそり、非常に秀逸だ。海外のことだが、シンガポールでは飲むまで味がわからない「ミステリー缶ドリンク」が発売され、1ヵ月で350万缶以上を売り上げるヒット商品になった例もある。「ストライド」はメガミステリーをシリーズ化する計画。第3弾、第4弾の商品化も期待したいところだ。

(大来 俊/5時から作家塾(R)