今度は新婦からお父さまへのお手紙の番です。
「私は小学生の頃、学校でいじめにあっていました。
辛くて辛くて、学校に行きたくなくて、
そうお父さんに伝えると厳しく怒られたこともありました。
本当に悲しくて毎日泣きながらお布団に入りました」
「あ、お父さんの話と同じ……」
会場は驚いたような空気に包まれました。
「でも、毎日泣きながら私がお布団に入ってしばらく経つと
お父さんはいつもそーっと襖をあけて、私のお布団の横に寝転がって、
しばらく私の顔をじっと見ていました。
そして必ず私のほっぺを何度も撫でてくれましたね。
そのお父さんの手があったかくて優しくて……。
とても安心しました。
お父さんのいろいろな想いが伝わってきて、
明日も頑張ろうと思えました」
そして、新婦は顔を上げて、お父さまの方をまっすぐに見て続けました。
「お父さん。お父さんはきっと今日まで私がすっかり寝ていると思っていたかもしれないけど、本当は私、毎晩起きていたんだ。お父さん……あの時はありがとう」
そう言うと、新婦は涙を堪えながらにっこりお父さまに笑いかけました。
その瞬間、お父さまは顔を覆って涙されたのでした。
数十年ぶりに魔法が解けたかのように明かされた、父と娘の優しい時間の記憶。
幼い娘の頬を撫でて優しく心の中で語り掛けるお父さまと、寝たふりをしながらそんなお父さまの気持ちを嬉しく感じている幼い頃の新婦の姿が 鮮明に浮かんできて、私も会場の隅で涙が止まりませんでした。
お互いを想い合う父娘の愛情は確かに通じ合っていたのだと。
会場のゲストたちもこの父娘の温かいやりとりに誰もが涙を浮かべ、力の限りの拍手はいつまでも鳴りやみませんでした。