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元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」
【第2回】 2012年1月26日
著者・コラム紹介
河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

口コミ不信をあおる「ステマ」は
どこまで拡がるのか

行き過ぎた商業主義が共感のネットワークを破壊する

新年早々「食べログやらせ問題」で大きな問題となった「ステルス・マーケティング(ステマ)」は、マーケティングにおける口コミ情報の信頼性を揺るがすにとどまらず、あらゆる面で生活者が有益な情報に接触する機会を奪う事態を招いている。これにどう対処すべきかを考えてみよう。

新年早々噴き出した
ネットでの「やらせ」騒動

 前回は、Googleのキャンペーンなどの事例を紹介し、インタラクティブ・マーケティングの可能性、つまり「光の部分」についての潮流を観察した。今回は反対の側面であるリスクや倫理の崩壊といった「闇の部分」について考えてみたい。

 テーマは今話題の「ステルス・マーケティング」だ。

 今年の年明け以降、「ステルス・マーケティング(ステマ)」という言葉や、それに関して書かれた記事を多く目にするようになった。ステルス・マーケティングの定義と、何をもってそう呼ぶかは人によってさまざまだが、比較的オーソドックスでわかりやすい解釈を引用すると、「消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること」(Wikipediaより)となる。

 なぜ今「ステマ」がこれほど取りざたされているのか。ご存知の方も多いと思うが、簡単に経緯を振り返っておく。

 ことの発端は1月4日に発覚した「食べログやらせ問題」である(それ以前から騒動の兆候はあったが)。

 月間利用者数3200万人以上ともいわれる人気グルメレビューサイトに39もの業者が無断で介入、“さくら”を雇って一部のお店の評価を上げる工作を行っていたことが判明し、同サイトの運営元である「カカクコム」がその実態を公にした。そして、ネット、マスを問わず多くのメディアがこの事件を大きく報道することとなった。

 レビューサイトにおける口コミやランキング、点数などはユーザーがお店選びをする際に重要な指標になるものだが、こういった評価をやらせ行為によって恣意的に変動させることは、明らかに「ステルス(隠密)」なマーケティング活動であり、現状、日本では違法でないとはいえ、ブラックで後ろめたい行為と批判されてしかるべきだろう。

 「ステマ」が表面化したのは、もちろんこれが初めてではない。過去にも数々のやらせ騒動が持ち上がっており、食べログ問題のように「人力による匿名書き込み」を行うものから、それとわからぬよう特定ブログのアフィリエイトにリンクする手法まで、その手口も多種多様化しているようだ。

 今回は食べログ問題に前後して、「ある有名ゲームブログが特定業者と癒着し、ステマ的工作を行っていたのでは?」という別の疑惑がクローズアップされるなど、さまざまな問題が同時多発的に表ざたになることで騒動が雪だるま式に拡大し、ネット上に「ステマ」の言葉が溢れることになる。このキーワードは、正月明け早々、Googleの急上昇検索キーワードにランクインすらしている。

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河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

1974年、大阪市生まれ。99年、早稲田大学政治経済学部卒業。お茶の水美術学院講師を経て、2000年より雑誌「広告批評」(マドラ出版)に在籍。08年、編集長就任。10年、同社退職後、雑誌・書籍・ウェブサイトの編集、企業の戦略立案およびPRコンテンツやイベントの企画・制作を手掛けるほか、講演活動なども行っている。


元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」

元「広告批評」編集長・河尻亨一氏が、ヒット商品、イケてる人や企業、話題の現象……などなど、「ヒト・モノ・コト」にまつわる旬のテーマをマーケティングの視点から読み解く時代批評です。

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