育てるのが上手い人、下手な人
経験から学ぶ力は、仕事に取り組む姿勢によって決まるが、そうした姿勢は、職場の上司や先輩によって育まれることも多い。特に、職場で行われる訓練(OJT:オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は、若手社員の仕事への「姿勢や構え」に大きな影響を及ぼす。
しかし、誰もが育て上手なわけではない。ある人事マネジャーは次のように述べている。
「長年、マネジャーを見ていると、育てるのが上手い人と、部下をつぶす人が確実にいます。人材を育てるには、育て上手のマネジャーを見極めて、その人の下につかせることが大切です」
では、育てるのが上手い人と、そうでない人の指導方法には、どのような違いがあるのだろうか?
私は、若手を育てるのが上手い指導者の特徴を明らかにするために、ダイヤモンド社の人材開発編集部と共同で「育て上手のOJT指導者調査」を実施した。その結果、わかったことは、育て上手な人ほど、若手の経験から学ぶ力を引き出している、ということだ。
シリーズ1~4回では、「経験から学ぶ力とは何か」について考えてきたが、本稿では、「経験から学ぶ力を育む指導のあり方」について検討したい。
育て上手の社員の特徴
民間企業22社に勤務する「入社1~5年目の若手社員の指導を任されている社員」715名、およびその上司に対する質問紙調査データを統計的に分析したところ、育て上手の社員は、つぎの4つの特徴を持っていることがわかった。
1)若手の目標をストレッチしている。
2)こまめに進捗を確認し、相談に乗っている。
3)振り返り(内省)を促している。
4)ポジティブな形でフィードバックしている。