2012年1月6日にとりまとめられた「社会保障・税一体改革素案」は、社会保障改革と税制抜本改革の2部構成となっている。最大の柱は、消費税率10%への引き上げであり、社会保障改革は、もっぱらそのためのアメ、あるいは、増税色を薄めるための中和剤である。したがって、その社会保障改革の内容は、社会保障制度が抱える諸課題に対する根本的な解を示すものではなく、自公政権時に官僚によって作られてきた改革案の継承が主体である。民主党マニフェストは、そこに同居している形だ。今回は特別編として、税、社会保障の順に、「素案」を評価する。

消費税率5%引き上げ効果は
割り引いてみる必要あり

「素案」では、2014年4月に8%、2015年10月に10%への消費税率の引き上げが明記されている。2011年7月に閣議報告された「税・社会保障一体改革成案」では、引き上げ時期は「2010年代半ば」と抽象的な表現にとどまっており、「素案」は具体性が増している。

 もっとも、そもそも今回の5%の引き上げでは、基礎的財政収支(プライマリーバランス)ですら、2015年度もなお16.8兆円の赤字であり、その後も赤字幅は縮まらず、2020年度16.6兆円の赤字になるというのが、直近の政府試算である。政府は、2020年度に基礎的財政収支を黒字化させる目標を掲げているものの、5%では全く足りないことは明らかである上、2016年度以降の展望もない。

 加えて、今回の5%も割り引いてみなければならない。1つは、5%のうち1%相当は社会保障の充実に充てられ、その1%相当は膨張する可能性がある。2つめは、5%のうち実際に使えるのは、消費税という税目の性質上、そもそも4%程度に過ぎない。3つめは、5%のうち1.54%を地方分に充てるとされており、財政健全化への寄与が不透明である。それぞれを検証してみよう。