「スペースX」「テスラ・モーターズ」「ソーラーシティ」「ニューラリンク」……ジョブズ、ザッカーバーグ、ベゾスを超えた「世界を変える起業家」の正体とは? イーロン・マスクの「破壊的実行力」をつくる14のルールを徹底解説した新刊『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』(竹内一正著)。この連載ではそのエッセンスや、最新のイーロン・トピックを解説していきます。

YouTube史上2番目の視聴者数を記録した偉業

2月7日に打上げに成功したスペースXの「ファルコン・ヘビー」の続報をお届けしたい。

世界中で約320万人の人々がこの時ファルコン・ヘビーの世紀の打上げをライブ視聴していた。これはYoutube史上2番目の多さで、注目度の高さがうかがえた。

2基のサイド・ブースターの同時着陸
(スペースX社Instagramより https://www.instagram.com/spacex/?hl=ja

ところで、ファルコン・ヘビーの中央本体ロケットであるセンターコアは、フロリダの沖で待つ無人ドローン船に着陸予定だったが、イーロンの思い通りにはいかなかったようだ。

地球目がけて降下するセンターコアは途中でロケットエンジンを停めたり、再度点火したりして、速度を調整しながら着陸地点に接近する。
だが今回、予定していた着陸前の再点火がロケットエンジン3基でなく、1基でしか成功せず、ドローン船から約90m離れた海上に約482kmの速度で没入してしまった。その時の衝撃はすさまじく「バラバラになったセンターコアの金属片がドローン船上に飛んできて、ドローン船の2基のエンジンも損傷を受けた」とイーロンは話していたぐらいだ。

しかし、センターコアの着陸に失敗したからと言って、ファルコン・ヘビーが快挙を成し遂げたことになんら変わりはない。
打上げ能力が約64トンと現役最大のファルコン・ヘビーが初めての挑戦で予定軌道まで打ちあがり、サイドブースター2体を地上に同時着陸させた高度な技術力は、間違いなく宇宙開発に大きな一歩を標した。

ところで、ファルコン・ヘビーには真っ赤なテスラ・ロードスターが搭載され、予定通りに火星と太陽の間をまわる楕円軌道に送り込まれた。
「なんで宇宙に電気自動車が?」といぶかる人もいたことは確かだ。

宇宙のテスラ・ロードスターから見た青い地球(スペースX社サイトより http://www.spacex.com/

何はともあれ、真っ赤なロードスターには宇宙服を着たマネキンの操縦士(「スターマン」とイーロンは呼んでいる)が乗っていて、運転席のフロントガラスから青い地球が見えるライブ映像が送られてくると度肝を抜かれた。
さらに、ダッシュボードのディスプレイは「DON’T PANIC!(パニックになるな)」と表示されていたが、これはイーロンが幼い時に読んだSF小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」からの引用だった。
「なにを、ふざけたことを」と眉をしかめる人もいるかもしれないが、スペースXは、ボーイング社と言った伝統的なお堅い宇宙企業とはひと味違う。失敗を恐れず、新たなことに果敢に挑戦するシリコンバレー精神が脈打つベンチャー企業だ。

そもそも、スペースXのロケットの名前「ファルコン」は、あのスターウォーズに出てくるソロ船長のミレニアム・ファルコン号に由来しているし、宇宙船の名前「ドラゴン」は、子供と不老のドラゴンの交流を描いた1960年代のヒットフォークソング「パフ・ザ・マジック・ドラゴン」から来ている。

さらに、海上でファルコンの1段目ロケットを待ち受ける無人ドローン船の名前は「Of Course I Still Love You (略してOCISLY)」だ。長ったらしい名前だが、イアン・バンクスのSF小説にこれもまた由来している。

遊び心満載のハイテク宇宙ロケットベンチャーがスペースXなのである。ファルコン・ヘビーの打上げ計画は現時点ですでに5回分がサイトにアップされている。マルチプラネットに向けてスペースXの奮闘ぶりを、宇宙から真っ赤なスポーツカーが見守っている。