ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
転職のオモテとウラ

「目先の高報酬」からはじまるキャリアクライシス
20代転職希望者が陥りがちな“待遇インフレ”の罠

鎌田和彦 [アート・クラフト・サイエンス株式会社 代表取締役会長]
【第3回】 2012年2月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

大手IT企業勤務の江口さん
転職など考えもしなかったはずが…

 時は2002年。大手IT企業に就職して5年が経過した江口さん(仮名)は営業職としての経験を徐々に積み重ね、自信をつけ始めたところでした。ただ無我夢中で仕事をこなしてきた2年目、3年目とは違い、ここ最近は自分自身で企画した提案を顧客企業に採用してもらえるようになり、自分の仕事に手応えを感じ始めていました。実際、各企業のITへの投資意欲は非常に旺盛で、江口さんのセクションでも大型の新規受注が次々と決定。新卒で入社した当時には半信半疑であったIT活用の進展を肌身で感じ、自分自身の進路に間違いはなかったという確信を得るようになっていました。

 そんな充実感の中で、江口さんは自分の勤務先に対する不満を全く抱いていませんでした。先輩や上司からの指導も手厚く、組織からは折に触れてまとまった研修機会も提供されています。会社全体で人を育てよう、人を大切にしようという雰囲気があり、居心地の悪さを感じたことは一度もありませんでした。

転職していった仲間が
まぶしく見えて

 ところが、ここ半年というもの、周囲の先輩や同期のメンバーたちが少しずつ会社を辞めていくようになってきました。彼らは一様に「会社には不満はない」「この会社は本当にいい会社だ」と言いながら、「でも、その居心地の良さと引き換えにチャレンジする場がない」「できない先輩が自分よりも高い給与を取っている」「上が詰まっていて、いつになったら責任ある仕事ができるのかわからない」といったことを理由に会社を離れて行きました。

 何人かの先輩社員や同期たちが転職していっても、最初の頃、江口さんにとっては完全に他人事。就職氷河期と言われる時代に苦労して入社した会社だけに、会社を辞めることなど全く想像できませんでした。

 しかし、会社を辞めていった人々と会うようになると、少しずつ心境が変化していきました。彼らは「IT業界の変化は速く、次々と新しい技術革新が生まれる」「だからこそ、そうした技術の先頭集団に身を置かなければ“キャリアにならない”」と主張するのでした。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

鎌田和彦 [アート・クラフト・サイエンス株式会社 代表取締役会長]

1965年神奈川県生まれ。88年慶應義塾大学文学部卒。89年(株)インテリジェンスを設立、取締役に。99年に同社代表取締役社長、2008年同社相談役。08年には日本人材派遣協会会長も務める。現在は、不動産投資会社アート・クラフト・サイエンス(株)の代表取締役会長。


転職のオモテとウラ

転職がブームと化していた2000年代半ば、意気揚々と転職していく若者が後を絶たなかった。しかし、彼らの多くが転職によって人生が好転したわけではない。社会人の2人に1人が転職するという「大転職時代」が到来した今なお、なぜ転職はうまくいかないのか。人材紹介事業を展開するインテリジェンスの元代表取締役社長であり、「転職のオモテとウラ」を誰よりも知る鎌田和彦氏が、転職市場が再び活況を迎える今、世の中に溢れる不幸な転職をなくすための処方箋を提案する。

「転職のオモテとウラ」

⇒バックナンバー一覧