これは本当にハワード・ストリンガー体制の幕引きなのか──。テレビ事業などを筆頭に業績不振にあえぐソニーが、7年ぶりに経営トップ交代を含む新体制を発表した。一見すると経営責任を取ったかのような会長職と社長職、CEOの退任だが、その実、「院政」が敷かれるとの見方が強まっている。
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「とにかく、ストリンガー氏にトップを降りてもらうことだけを争点にしよう」。そんなつぶやきが、ソニーの社外取締役のあいだで飛び交うようになったのは、年明けのこと。
1月上旬、ソニーの経営体制をめぐる駆け引きは一気に激しさを増した。きっかけは一部報道で「ストリンガー氏が会長、CEOを続投する」と伝えられたことだ。業績不振による退任を望むソニー幹部のあいだでは、これはストリンガー氏側からリークされたもので、同氏による“続投表明”だととらえられた。そして正式に社内決定する2月の取締役会に向けて、事態は熾烈を極めていった。
目下、7年目になるストリンガー体制は業績低迷にあえいでおり、4期連続の最終赤字は確実視されている。主力のテレビ事業の赤字に歯止めがかからず、8期連続、累積7000億円を超える巨額赤字を見込み、「心情では、誰もがテレビをやめたい」(ソニー幹部)というのが実情だ。そんな閉塞感が漂うなか、70歳という会長職の定年が迫るストリンガー氏の経営責任にスポットが当たっていた。
ところが週刊ダイヤモンド取材によると、ストリンガー氏はトップの座を手放す気はさらさらなかった。1月上旬に米ラスベガスで開かれた国際家電見本市の「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)の期間中、平井一夫副社長を含む一部幹部を招集。「自らの続投と、それぞれの新ポジションについて合意を求めた」(ソニー関係者)という。つまり続投に向けて奔走していた。