【高評価の解答例(1)】
私は、今の社会の格差は行き過ぎていると考える。課題文の「一生懸命努力した人がより多くの収入や良い待遇を得られるのは理に適っている」という指摘に異論はない。しかし、今の日本は努力しても豊かになれないという状況がある。日本は正規雇用と非正規雇用の待遇の差が激しい上、企業は正規雇用を減らし非正規雇用を増やす方向に動いている。このため、一度正規雇用から外れると賃金の安い非正規雇用につかざるを得ないことになる。頑張って働いても豊かになれないワーキングプアと呼ばれる人が増えているが、それはこのような状況から生まれている。努力次第で差がつくということはあっても良いが、その前提として正規・非正規の区別をなくす、両者の待遇差を小さくするなど、雇用制度を公平なものにする必要がある。(以上)

冒頭で「今の社会の格差は行き過ぎている」という結論を先に示しています。課題文の「一生懸命努力した人がより多くの収入や良い待遇を得られるのは理に適っている」という部分には賛成しつつも、「今の日本では制度上の不公平があるから、そのまま受け入れられない」という理由で冒頭の結論を補足しています。

「結論→課題文の主張に全面的には賛成できない」という流れで書くことで、主張を明確にしつつ、課題文を踏まえていることが採点者に伝わります。

「課題文の主張に賛否を示す」
という方法は万能ではない

課題文付き小論文の指導においては、「まずは冒頭で賛否を示せ」と言われることは少なくありません。本記事でも、「賛否が分かれる課題文を読ませて、自分の意見を書かせる」という基本的な形式の問題を例に挙げたため、「筆者の主張に賛否を示してから自分の意見を述べる」という書き方を紹介しました。

しかし、賛否を示すことが小論文の書き方のすべてではありません。
実際には、それ以外の書き方をしなければいけない場合が数多くあります。

たとえば、次のページの問題を見てください。