普通のオヤジ・サラリーマンが、AI時代に生き残るには写真はイメージです

 いまある仕事の4割がなくなると言われる、これからのデジタルエコノミーの時代。いまさらデータサイエンティストやAI開発者にはなれない普通のオヤジ・サラリーマンが何を学び、どのようなスキルを高めていけばいいのか――。今回は、このことについて語りたいと思う。

 ご存じのように、デジタルエコノミーの時代に向けた大量リストラはすでに始まっている。昨年10月には、みずほフィナンシャルグループが今後10年間で1万9000人分の業務量削減を発表。続いて三菱UFJフィナンシャルグループが約9500人、三井住友フィナンシャルグループは約4000人相当の業務量を減らす方針であることが報じられた。メガバンク3行を合わせて3万3000人分の削減である。

 銀行員がリストラされることの意味は、たんに数多くの人間が職を失うだけではない。安定していて高給で、いまだに就活人気も高いメガバンクの社員でさえリストラの対象となる。そのインパクトはやはり大きい。銀行員以外にも、証券会社や製薬会社の営業マンなど、多くの業界で大量リストラの嵐が吹き荒れている。さらにこれからは、内科医や弁護士、公認会計士の仕事もなくなるとも言われている。このように、比較的高収入だったサラリーマンや専門職が職を失い、中間層が没落する。AI時代の本当の恐怖はこれだ。

人間に優位性がある
「人に体験の感動を与える」仕事

 しかし、デジタルエコノミーの時代になっても、人的サービスは当面はなくならないだろう。たしかに、これからの時代はAIとロボットの時代だし、ロボットホテルやロボットレストランはすでに出現している。今後は介護ロボットも登場するだろう。また、小売業でもAmazon Goのような無人コンビニが増えるだろう。自動運転が実用化されれば、タクシーやトラックの運転手は失業するだろう。しかし、それでも人は人的サービスを求める。というか、むしろ人間が接するサービスへの需要は増える可能性もある。

 インターネットの時代になって、音楽もデータ配信の時代になり、CDは売れなくなった。音楽業界は壊滅的な打撃を受けたと言われる。しかしその一方で、ロックフェスや夏フェスなどの音楽イベントは興隆しているし、横浜アリーナや武道館クラスの会場で単独ライブができるアーティストも増えた。大人にはほとんど知られていないようなアーティストが、武道館2DAYSとかやっていたりする。ライブの動員数は増えているし、ライブマーケットは拡大している。

 同様に、AIとロボットの時代になればなるほど、ライブ(生の人間が提供するサービス)のニーズは高まり、その価値も高まるだろう。自動運転によってタクシーの運転手が失業する時代になっても、エステや美容室では人間のサービスを人は求めるだろう。その差は何かというと、タクシーの運転手は目的地まで客を運ぶという「機能」を提供しているだけだが、エステシャンや美容師は機能に加えてコミュニケーションも含めた「体験」も提供していることだ。つまり、デジタルエコノミーの時代には機能は容赦なくAIやロボットに置き換わるが、体験の提供には人的なモノを求めるということ。AI時代に最後まで残る職業はホストとキャバ嬢だと当連載でも何度も指摘してきたが、その意味はこういうことなのだ。

 そして、「人に体験の感動を与える」という仕事は、当面は人間に優位性がある。人間というものは複雑で、そう易々と人間同等のロボットやアンドロイドは作れるものではないからだ。ただし、介護ロボットのように、ある機能に特化したロボットはまもなく実戦配備されるかもしれない。ただ、人的サービスとは、機能が提供されていればよいというものではない。どれだけ優れた介護ロボットが登場しても、人間の介護者と触れ合いたいというニーズはなくなるわけではない。多くのSF映画やドラマが描くように、ロボットやアンドロイドが人間に近づけば近づくほど、生身の人間の価値は高まる。また、ロボットやアンドロイドも、高機能で画一的な製品は作れても、人間のような個性を生み出すのは困難だろう。