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アマデウスたち

岡村桂三郎
宗教的行為の一部として描く

週刊ダイヤモンド編集部
【第85回】 2009年7月10日
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岡村桂三郎
写真 加藤昌人

 二曲一双の屏風に見立てた縦235センチメートル、幅720センチメートルの巨大な杉板のパネル。表面をバーナーで焼き、水で洗い流し、膠(にかわ)と方解石粉(ほうかいせつぷん)を下地として塗り重ねていく。筆は使わない。油絵用のスクレーパーで下地を荒々しく削り、力強い線を刻み込んでいく。描き出された二頭の猛獣が呪術的な生命力を放つ「獅子08―1」は、2008年度の日経日本画大賞受賞作となった。

 ゾウやインドの伝説上の鳥・迦楼羅(かるら)などのモチーフを同様の手法によって特大パネルに描いた作品群が暗い照明の中に屹立する個展会場に足を踏み入れると、洞窟の中で古代人が描いた壁画に接しているような、あるいは森閑とした神域に迷い込んだような畏れにも似た感覚に襲われる。

 なぜ描き続けるのか――。自問を繰り返していた30代半ば、米国留学の合間に訪れたアリゾナ州の砂漠地帯で、その地で生活していたはずのネイティブアメリカンをふと思い浮かべた。その瞬間、荒涼とした風景が人間の生命を育む、彩り鮮やかな自然に切り替わったという。

 生きとし生けるものすべてに神性を見出す原始宗教は、自然との共存の基盤であり、生命の循環をつなぐチャネルとして欠くべからざるものだった。そして、絵を描くことは、宗教的行為の一部として連綿と繰り返されてきたのだ。だから人は描き続ける――。岡村の作品を前にして感じる畏れは、受け継がれたこの生命に気づく喜びと表裏一体である。

(ジャーナリスト 田原 寛)


岡村桂三郎(Keizaburo Okamura)●画家 1958年生まれ。東京藝術大学美術学部絵画学科日本画専攻卒業、同大学院博士課程満期退学。五島記念文化賞美術新人賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、日経日本画大賞など受賞多数。東北芸術工科大学芸術学部教授。

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