福島の原発事故は早急な解決が求められる問題であり、国のエネルギー政策もまた速やかに方向性が定められるべき課題である。その中にあって、先日発足した「みんなのエネルギー・環境会議(MEEC)」は、あえて短期的な問題解決ではなく、時間をかけた対話を活動理念に掲げている。今回は発起人の1人である原子力推進派の東京工業大学・澤田哲生助教が、今後、日本の原子力政策はどう議論されていくべきかを語る。

秘密主義的だった日本の原子力政策<br />求められているのは、オープンでフェアな議論<br />――東京工業大学・澤田哲生助教澤田哲生/東京工業大学助教

 私は、これまで原子力研究に深く携わり、原子力エネルギーの利用を推進する立場にありました。その立場は、福島第一原発の事故を経た現在もなお変わっていません。その私が、MEECという市民会議に発起人として名を連ねていることを不思議に思っている方もいらっしゃるようです。

 MEECは、反原発、原発容認、原発推進といった立場を越えて、これからの日本のエネルギーについて広く語り合っていくことを目的として発足した会議です。いま日本にとって最良の選択が問われていると思います。その点で、原発推進派である私がMEECに参加していることに矛盾はありません。しかしそれとは別に、私は以前より、エネルギー政策の決定過程が専門家ではない一般の方々にもオープンされなければならないという問題意識を持っていました。2010年春にスタートし、私も参加した「原子力政策円卓会議2010」は、まさにそのような問題意識を抱えた人たちの立場を越えた集まりでした。

 これまで、日本の原子力政策は原子力委員会を中心に決められてきたわけです。ところが、その会議でどのようなことが話し合われ、どのような議論を経て原子力政策が決まっていくかということは、私たち国民にはほとんど明らかにされてきませんでした。その内実が極めて不透明で、秘密主義的であったわけです。そこで、10年以上前から原子力政策円卓会議などが発足し、市民の声を聞くようになりました。

 しかし、実際どの程度原子力政策の実に繋がっているのかは、よく見えない。それが日本の原子力政策の最大の問題であると、反原発の立場の人たちはもちろん、少なからぬ原発推進派の人たちも考えていました。その秘密主義を改め、原子力の利用に関する議論をもっとオープンで、フェアで、民主的なものにしていかなければならない。そして、MEECはその実現に繋がる場になるかもしれない。いや、そうしなければいけない。そう私は思うのです。