財務省は1月25日、2011年分貿易統計(速報)の概要を発表したが、それによるとわが国の貿易収支は約2.5兆円の赤字となった。赤字になったのは、実に31年ぶりのことである(通関ベース。なお、国際収支ベースでは48年ぶりの赤字転落となる)。
赤字転落の原因は明白
赤字転落の原因は明白である。まず、輸入が前年より7.3兆円(伸び率ではプラス12.0%)増えたが、そのうち、輸入全体の約3分の1を占める鉱物性燃料が4.4兆円増えている。その内訳は原油および粗油が2兆円、液化天然ガスが1.3兆円となっているが、前者は数量が減っているので、原油価格の高騰が原因であり、後者は数量も伸びているので、発電用燃料の需要増に応えたものであろうと推察される。
前回の赤字が第2次オイルショック後の1980年であったことを考えてみると、わが国の貿易収支が赤字になるのは、原油価格の高騰、もしくは鉱物性燃料の需要増が引き金になっていることが窺える。
一方、輸出の方も、1.8兆円(マイナス2.7%)減少した。わが国の輸出構造は、輸送用機器、一般機械、電気機器の3者がそれぞれ2割前後を占めているが、2011年は一般機械が0.5兆円(プラス3.7%)増加したものの、輸送用機器が1.3兆円減少し(マイナス8.0%)、また、電気機器も1兆円(マイナス8.3%)減少した。ただし、輸送用機器の太宗を占める自動車をみると、数量がマイナス7.1%、また電気機器の中で最大の輸出品目であるICの数量もマイナス7.4%となっているので、輸出が減少した主たる要因は、価格ではなく、主力品目の数量が伸びなかったことによるものと推察される。
以上、述べてきたわが国の貿易構造を考えてみると、繰り返しになるが、貿易収支が赤字になるか黒字になるかのポイントは、鉱物性燃料の価格がどうなるか、また、国内の鉱物性燃料に対する需要がどうなるか、という2点に大きく依存していることが理解されよう。そして残念なことではあるが、前者はまったくわが国ではコントロールができないという事実を押さえておく必要がある。