米国株失速が物語る“トランプ関税”の代償、米著名投資家が語る「恐怖が生むチャンス」Photo:Michael M. Santiago/gettyimages

トランプ大統領が打ち出した関税政策に世界中が注目をし、恐れをいただいている。米著名投資家ケン・フィッシャー氏は、トランプ大統領の関税が愚かなことに米国自身を最も傷つけたと指摘する一方で、関税を巡る懸念は過剰であって、恐怖はチャンスを生むことを読者に投げかける。

米国は4位から42位へ
市場は真実を知っている

 トランプ米大統領が「報復関税」と称して、対日本に24%の関税を課し、加えてすべての国に一律10%の関税を宣言して以降、市場の不安定さは続いている。このような不確実性の中でも、利益を得る道は存在する。

 関税は「常に」導入した国自身に最も大きな打撃を与える。筆者の意見を信じなくてもよい。市場という最も中立的な存在が真実を語っている。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産25兆円超の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 5月21日時点で、米国外の株式は年初来4.5%上昇している。中国株は7.1%上昇、欧州株は11.0%の上昇、メキシコ株は18.0%も上昇している。一方、米国のS&P500は−8.8%と大きく下落している。衝撃的な出遅れである。関税懸念が日本の自動車株に影響を与えているにもかかわらず、TOPIXでさえ米国株を大きく上回っている。

 別の見方をすれば、MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス(ACWI)を校正する47カ国の中で、米国の年初来リターンは42位にとどまっている。昨年の米国は38.9%の上昇とACWI平均を約8ポイント上回り4位に位置していた。

 なぜ米国は4位から42位に転落したのか。その理由は「47番目の人物」すなわち第47代大統領にある。トランプ氏の気まぐれな政策と変節により、資金は米国市場から逃避している。市場は関税を含めて貿易赤字を削減しようとする試みが誤りであることを見抜いている。