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カイゼン!思考力

いま決めていい?――悲しみ効果の罠

嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]
【第84回】 2012年2月17日
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陥りがちな思考の罠に迫る「カイゼン!思考力」。今回は、「悲しみ効果の罠」を取り上げる。

――問題です

 以下のAさんの問題は何か。

 AさんはスーパーZ社のバイヤー。先日、年老いた母親を亡くし、忌引き休暇から復帰したばかりである。復帰早々、消費財メーカーB氏との価格交渉に臨むことになった。B氏は事情をおもんばかってミーティングの延期を申し出てきたのだが、Aさんは「プライベートのこととは切り分けます」と答え、当初の予定通り、価格交渉のミーティングが行われることになった。B氏の要望は、原料費高騰の折、納入価格を値上げしたいというものであった。

A「…ということは、原料費の高騰分をそのまま価格に転嫁したいということですか」

B「そのままというわけではありません。弊社でももちろん原料費のアップを何とかお客さまに転嫁しないよう努力はしているのですが、それにも限界があります。企業努力でなんとか10円分は我われの方で削りますので、残る半分の10円分をご負担いただけないかということです」

A「それにしても、ウチから見ればこれまでの仕入れ値が200円だったものが210円になるわけか。売れ筋商品なだけに痛いな。うちもお客さまにそう簡単に転嫁できるわけじゃないんですよ。小売業界の競争が厳しいのはBさんもご存じでしょう」

B「そこを何とか。原料費が20円上がっている中、社内だけでそれをカバーするのは不可能なんです。50/50の分担というのは決して無理なお願いではないと思うのですが」

A「まあ、確かに50/50の分担というのは一見、切りがいいのでそこで決めがちだけど、もっとちゃんと議論すべきだと思いますよ」

B「弊社としてはこれでもかなり良い条件を出させていただいていると思います。ぜひこの条件でお願いしたいのですが」

 Aさんは、ここはもっと粘るべきと頭の中では計算していたが、いま1つ、ハードネゴで値下げを要求する気にはなれなかった。

A「まあ、そう言われればね…。まあ、おたくも努力しているようだし、仕方ないか。じゃあ、その線で進めましょう。この商品は固定ファンも多いし、そう簡単に客離れも起きないでしょう」

B「ありがとうございます!」

 交渉からの帰り道、B氏はこう考えていた。

 「Aさんのことだから、もっと粘ってくると思っていたのだが、なんだか意外だったな。207~208円くらいの落としどころを想定していたのだが…」

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嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社、主に出版、カリキュラム設計、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当する。現在は出版、情報発信を担当。累計120万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」や、「グロービスの実感するMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。
グロービス経営大学院や企業研修においてビジネスプラン、事業創造、管理会計、定量分析、経営戦略、マーケティングなどの講師も務める。また、オンライン経営情報誌 GLOBIS.JPなどで、さまざまな情報発信活動を行っている。


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ビジネスパーソンが日常生活やビジネスの現場で陥りがちな思考の罠。そんな罠になぜ人ははまってしまうのか――。その謎と罠に陥らない方法に迫ります。

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