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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第18回】 2012年2月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

他者と自分を比較していがみ合うのではなく
小さな違いを前提として共存する姿勢を

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被災地に生まれた「小さな違い」で一体感が揺らいでいる

 最近、仕事で東日本大震災の被災地に行く機会がありました。

 自治体の人や支援に携わる人たちの話を聞くと、震災から1年近く経って被災者の状況に変化が起こり始めているといいます。

 震災から時間が経つにつれ「小さな違い」が顕著に現れてきました。たとえば仕事の面だけを考えても、早い時期に仕事が見つかった人がいる一方で、なかなか見つからずに今でも求職を続けている人がいます。

 「あの人だけ見つかってずるい。私だけ損をしている」

 こんな不満をあからさまに口に出す人はいないようですが、ちょっとした違いに不満を抱える人も増えてきているようです。

 特に福島では「小さな違い」が目立っています。原発事故で家に戻れない人や、別の場所へ行ったきりの人は別にして、事故発生直後や夏休みの間など一時的にそこを離れた人とそのまま居続けた人の間に、何かぎくしゃくとした空気が流れているというのです。

 医療関係者の例で言うと、一時的に被災地を離れた医療関係者と、現地に残って医療に従事した人がいます。特に医療従事者としての強い使命感をもって残った人は、あまりはっきりとは言わないにせよ、一時的に離れた人に対して複雑な感情を抱いています。反対に、一時的に離れた医療関係者にも負い目を感じている人がいるようです。

 震災から1年が過ぎようとしている今、こうした「小さな違い」が顕著になればなるほど、震災初期にあった「被災者全員が何事も共有し、みんなで一緒に頑張ろう」という雰囲気が揺らいでいきます。

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    香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

    1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


    香山リカの「ほどほど論」のススメ

    好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

    「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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