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リーダーはデジタル変革の
“最初の一押し”をどう支援するか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第78回】 2018年3月9日
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どうやってデジタル変革を進めるか

 第1段階の取り組みについて具体的な進め方の例を示しておこう。例えば、IT部門長が自分の権限が及ぶ範囲でイノベーションの推進担当者を指名し、AIやIoTなどの自社ビジネスへの適用可能性を探るような取り組みを実施する。予算についても自部門の裁量で承認できる範囲で確保するのが望ましい。推進担当者は、該当するデジタル技術の技術動向や先進事例などの調査・研究を行うとともに、自社のいくつかの部門を対象として適用可能性を探る。

 また同時に推進担当者を設置したことと、デジタル技術活用に関する相談を受け付けることを関係部署または全社に告知する。これは、事業部門などでイノベーションのアイデアやビジネス機会があるにも関わらず、従来の社内ルールでは推進できずに眠ったままとなっている案件があるかもしれないためである。こうして推進担当者が着目したテーマや事業部門からの相談案件のいくつかを抽出し、ベンダーなどの協力を得てPoCなどを実施するなどして最初の一歩を踏み出していく。

 このような実績をいくつか積み重ねていくうちに、社内での認知度は高まり、新しい取り組みへの抵抗感は軽減されていくだろう。それと同時に環境整備のために変革すべき課題を明らかにすることができるはずだ。小さな成功を示すことができれば、社内を動かすことも次第に容易になってくるであろう。

 変革に対する姿勢や環境整備のステージは企業ごとに異なるため、デジタルイノベーションの推進方法も一律ではない。すでにデジタライゼーションを戦略の中核に据えて積極的に取り組んでいたり、推進への環境が整っていたりする企業は、第1段階をスキップすることができるかもしれない。

 一方、環境が整っていない企業では、組織や制度を変革するには大きな労力と時間を要するため、それを待っていたのでは何も始められない。第1段階の取り組みで小さな成功を積み重ね、企業内の過去の常識を打破しつつ、環境を整備していくことが求められる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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