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電子書籍全盛時代に現れた最新印刷技術
プリント・オンデマンドは出版界の救世主となるか

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第184回】 2012年2月22日
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 アメリカは、今やまさに電子書籍全盛時代に突入しようとしている。一部の出版社では、電子書籍の売上が全体の20~28%を占めるにいたった。また、タブレットコンピュータや電子書籍リーダーを持つ成人の割合は、昨年のクリスマス商戦の効果で現在は昨年末から倍に増え、19%になった(ピュー・インターネット&アメリカン・ライフ調べ)。もうプリント版の書籍などなくてもやっていけそうだと考える読者も出てきたくらいだ。

 ところが、紙のいらないそんな電子書籍時代に注目を集めている印刷技術がある。「プリント・オンデマンド」と呼ばれるものだ。

 プリント・オンデマンドは、いわば自動車製造工場のカンバン方式のようなもの。大量生産を見込んで材料をいろいろ回りに揃えておくのではなく、必要に応じてその都度材料を揃え、機械を稼動して製造、出荷する。自動車と異なるのは、材料が電子ファイルと紙だけという点だ。印刷のオンデマンドは、自動車のカンバン方式よりももっと手軽なのである。プリント・オンデマンドが注目を集める背景には、こんな現実がある。

 現在、アメリカの出版社は電子書籍時代の到来に戦々恐々としている。もちろん電子書籍に乗り出さないと時代に取り残されるとわかっているので、社内の組織編成を行ったり、デジタルに強い新しい人材を雇ったりして、新しい出版時代に備えている。ところが、その一方でレガシーのプリント版書籍の出版も続けていかなければならない。

 このプリント版書籍の出版には数々のお荷物がついてくる。ひとつは書籍の製作。つまり印刷と造本だが、どんな書籍でも最終的に何冊売れるかわからないので、ある程度の数を見込んで刷る。それをまた流通させるための配送費、倉庫に貯めておくための在庫管理費なども必要だ。その書籍がベストセラーにでもなればいいが、そうでなければ在庫管理費はただの無駄遣い。その上、全国の書店から戻ってくる返本の処理が、悩みの種に加わる。プリント版書籍は、そうした不測のお荷物を見込んだ価格設定になってはいるものの、電子書籍時代への移行にコストをかけつつ、このプリント版書籍のビジネスを並行して運営するのは、簡単なことではないのだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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