応えられた祈りと、魂の目覚め

 手術が終わり、現時点でできる限りの処置がなされた僕は、意識を失ったままストレッチャーに乗せられ、熱傷病棟の集中治療室に移されることとなりました。

 薄暗い廊下を運ばれていく僕を両親は目にしますが、あまりにも損傷の激しい姿に、見分けることさえ不可能でした。

 それも当然でしょう。皮膚の4分の3以上が焼けただれ、髪の毛もなくなり、顔の中で残っているわずかな部分でさえ、酸素マスクに覆われてはっきり見えなかったのですから。

 医師はまた、メスで腕と足を、指先やつま先まで切り裂きました。そうしないと、流れ出た体液が火傷をした体の中にたまり、破裂する危険があったからです。

 父は、僕が経験しているに違いない苦痛を思い、どうか僕を天国へ連れていき、痛みを終わらせてほしい、と神に懇願しました。でも、母は涙ながらに、僕の命が助かるようにと祈っていました。

 母は、僕の体がどんなに損なわれようと自分の愛は変わらない、と父に告げたのです。 

 おおかたの予想に反し、僕はどうにか峠を越えました。

 両親は、包帯をすべて外した僕の姿を見たとき、激しいショックを受けるだろうことは事前に忠告されていましたが、これからの人生がいかに困難なものになるかということを悟りました。

 包帯の下から現れた僕の顔は、ほとんど原形をとどめていませんでした。

 鼻も唇も、まぶたもなく、耳は溶けていました。

 髪の毛のほとんどは毛根から破壊され、小さな手の指も足の指も取れてしまっていました。

 そんな僕の姿は、たとえ両親の目にも、とても人間には見えなかったに違いありません。

 ましてや、わが子になど、とうてい見えなかったことでしょう。

 生きることを運命づけられた僕ですが、家族も病院スタッフも、そして誰もが、決して以前のような元気いっぱいの腕白坊主には戻れないだろう、と思っていました。

 でも、ある週末、父が特別なお土産を持ってきてくれた時、僕の魂は突然、目覚めたのです。

*この連載は、3/5~3/9まで、5日連続で更新します。


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