偉大なリーダーの意思決定は
苦悩と深い思索の末にあるのか
辻一弘氏がオスカーを受賞したことでも話題のアメリカ映画「チャーチル」。映画では、第二次世界大戦初期に世界の命運が英国首相チャーチルの双肩に重くのしかかる。ナチスとの厳しい交渉の中、イギリスはもはや降伏しか道はないのかという崖っぷちに立たされる。
政権内を覆う空気は、ドイツとの圧倒的な戦力差の前には降伏もやむなしというものだった。チャーチルは深く苦悩する。しかし、ハーケンクロイツがバッキンガム宮殿に掲げられる絵図を想像して、「ダメなものはダメ」だと立ち上がり、演説する。国民の闘志を呼び起こし、勇気を掻き立てる。
チャーチルファクター。まさにチャーチルの決断によって、歴史は書き換えられ、ナチスの世界制覇は阻まれたのだ。
現代の日本の話をしよう。「○○という事業から撤退。子会社を売却」「△△との経営統合。単独の生き残りは難しいと判断」など、日々報じられる企業や組織の大きな意思決定の背景には、チャーチルほどでないにせよ、重圧に耐えたリーダーが重い決断を下すものだと思っていないか。
これらの背景には、深い思索や逡巡や苦悩があってほしい。そのうえで、「しかたない」、「それ以外の選択肢はなかった」と言ってほしいと思う。しかし、その実態はチャーチルとはかけ離れているかもしれない。
かなり前の話だが、ある店舗展開をしている会社から、店舗の「採算性分析」の依頼を受けた。すでに別のプロジェクトで関わっていた会社で、あくまで、これもついでにやってほしい、というくらいの軽い依頼だった。