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田中均の「世界を見る眼」

北方領土問題で思う日本の戦略的思考のなさ
プーチン再登板を機に日ロ関係の「質的進化」を

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第6回】 2012年3月21日
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 北方領土問題を考えるたびに思うのは、日本の戦略的思考のなさである。4島が日本の固有の領土であることにはいささかの疑いもない。他方、今日、ロシアとの間で4島が日本に帰属するという合意を作ることは容易ではないことも、事実なのだろう。

 一方において、台頭する中国にどう取り組むのかといった東アジア政策やエネルギー政策を考えるとき、日本にとってのロシアの重要性は増している。中露関係は国境線の確定により飛躍的に拡大しているが、ロシアにとっても極東部分を中国のみに依存することは好ましいことではなく、日本との関係の重要性は増しているはずである。

容易に合意できない北方領土問題が
日ロの戦略的関係の活用を難しくする

 しかし、北方領土問題の存在は日ロが戦略的関係を最大限活用することを難しくしている。北方領土問題の存在が個別の日ロ協力案件の致命的な阻害要因となっているわけではないが、やはり未解決の領土問題の存在や平和条約がないことが、事実上両国関係を大きく発展させる心理的な阻害要因となっていることは否めない。

 もし日ロ関係を飛躍的に拡大することが日本の国益であるという判断をするのであれば、日本は現実を直視しつつ、戦略を練り直す必要がある。従来の政府方針は「4島の帰属に関する問題を解決して平和条約を締結する」「返還の時期、態様については柔軟に考える」ということである。

 すなわち、日本の立場からすれば、返還の時期はともかく、56年宣言に盛られた歯舞・色丹の2島だけでなく、歯舞・色丹・国後・択捉の4島全てに関する帰属問題で解決を見ない限り平和条約は結ばない、という方針である。

 しかし、待っていればロシアが柔軟になると見通せるのであればまだしも、このまま未来永劫こう着状態を続けるというわけにも行くまい。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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