新人の研修中にちょっと注意をするだけで「パワハラ」と言われてしまうことを恐れ、「最初から何も言わない」という管理職も少なくない!(写真はイメージです)

大学でサッカー部の主将を務めた新人が、研修中のたった一度の叱責で無断欠勤をする。その後、彼は退職届を提出するとともに、研修中の叱責を暴言、パワハラ行為だと訴え、金銭要求の反撃を始めるが…。(特定社会保険労務士 石川弘子)

S社概要
創業60年の建設業。高度経済成長期の波に乗って順調に業績を上げ、現在は従業員数800名の規模に拡大。教育体制や福利厚生も充実し、社員食堂や社員寮なども完備している。
登場人物
吉岡:有名大学の教育学部卒業。大学ではサッカー部の主将を務めた新卒社員。体育会系の学生らしいがっちりとした体格と、ハキハキとした受け答えが好印象だったので、採用となった。学生時代の成績も優秀で、期待の新人である。社員寮に住んでいる。
天海部長:50代後半の人事部長。営業職に従事した後、ここ10年ほどは本社の人事で主に採用・人材育成を担当している。
武井:30年以上勤める50代の職人。腕が良く、飾らない人柄が職人たちに慕われている。
本田:吉岡の同期で、地方の国立大学出身。物静かだが、真面目で芯が強い。吉岡と同じ社員寮に住んでいる。

無断欠勤の新人を心配し、
社員寮を訪れるが…

「新人の吉岡さんがここ3日間無断欠勤をしているんです。メールも電話も返答がなくて、どうしたらいいでしょうか……?」

 営業課長から天海人事部長に内線連絡があったのは、5月の中旬の頃だった。天海は、自身が採用した吉岡が無断欠勤をするような社員とは思えなかったために驚いた。なぜなら、面接時の彼の印象は、サッカー部の主将を務めていたこともあり、非常にエネルギッシュで礼儀正しく、頭の回転の良さもうかがえたからである。

「もしかしたら、何か事故に巻き込まれたとか、事情があるのかもしれない。様子を見に社員寮へ行ってみる。また連絡するから」