行列を我慢させるのが米国式?
国によって違う混雑への対応策

 アメリカでは運営側は基本的に混雑を歓迎したい。「混雑イコール金」なのだ。そこで金を極力逃さないために発達したのが、長い行列を顧客が我慢できるような仕組みの設計能力である。

 テーマパークの例で言えば、わずか十数分で終わるアトラクションに乗るためにゲストが2時間の行列に耐えてくれるために何が必要なのかを、徹底的に考える。たとえば行列に並び始めてやや疲れが出てきたころに、行列の脇に突然マジシャンが登場して手品を始めてくれたりする。

 ようやく行列の先頭らしきところに辿りついて建物のゲートの中に入れたと思ったら、実はそこではまだ行列は半分しか終わっていない。これも予め設計されたことなのだ。屋外の行列の先には屋内の行列がある。ところが屋内の部屋に入って様々な設置物を見たり、液晶パネルの画面を見ながら説明を受けたりしていると、行列に並んでいるにもかかわらず、もうアトラクションが始まっているかのように錯覚できるのだ。

 こうした屋内の部屋を最低でも3部屋くらい通すことで、ゲストはずっと行列に並ばされていることに気づかない。これがアメリカ方式である。

 アメリカ人ほど混雑から金を絞り出す必要がないのが、フランス人だ。ルーブル美術館、凱旋門、エッフェル塔、ベルサイユ宮殿など、歴史があって経済学的には減価償却も済んでいるアトラクションが大量に存在する国なので、フランスでは場内の混雑を減らして適量のゲストだけを相手にしたいという観点から、混雑緩和方法を設計する。

 その基本思想は、並ばせてうんざりさせることにある。エッフェル塔でもベルサイユ宮殿でもゲストはまずチケットを購入する列に並ばされる。数十分かけてようやくチケットを購入できたゲストは、今度は入場するための列に1時間並ばされるのだ。

 こうして混雑にうんざりする外国人は、徐々にパリやパリ近郊のあまり混雑していない場所を目指すようになる。パリにはいくらでも歴史ある名所が存在するから、有名な名所を不便にしておけば、パリの隅々に観光客が分散して、混雑を自動的に緩和してくれるようになるのだ。

 ただし、京都やTDL、USJなどではフランス方式を採用しても逆効果だろう。なにしろ混雑は今現在でも大変だが、これから先はさらに悪化することがわかっている。日本は2800万人の訪日客を、2020年の東京オリンピックまでに4000万人まで増やす計画があるからだ。