混雑の原因である人の数がそもそも多すぎる国では、違うタイプの対策が行われる。シンガポール方式では、極端にコストを上げることで混雑を緩和させる。たとえば市の中心部に車を乗り入れる場合、ナンバープレートが奇数か偶数かで入れる日を決める。それで混雑は半分に減らせる。

 しかし、そうすると車を2台買う人が出てくるので、次に車1台の保有コストを上げる。シンガポールでは車を1台買うのに巨額の税金が上乗せされ、1000万円くらいかかるのだが、それにはこうした目的があるからだ。

 シンガポール方式にはTDLやUSJも学ぼうとしているようで、毎年のようにパスポートの価格を値上げしている。しかし、それでもまだ混雑に悩んでいるところを見ると、まだ値上げ幅が足りないのだろう。たとえば奇数日を今の価格にし、偶数日のパスポートはひとり2万円に設定すれば、1日おきに「混雑しないで楽しめる日」ができる。そんなアコギなことをするかどうかは別にして、それをやって成功しているのがシンガポール方式だ。

 最後に中国方式だが、これは政府が何もしない代わりに民間は何でもやっていいという方法だ。何しろ国民の人数が多すぎる。国が計画してもうまくいくわけがない。春節の帰郷列車の混雑など、人間の許容範囲を超えている。

 そんななか、誰も何もしなければ市民の不満は高まるが、そこに目をつけてお金を稼ごうと「混雑が嫌いな層に向けたベターサービス」が登場することで不満は解消される。そうしたものが様々な階層レベル・価格レベルで登場する。だから自分の許容度に一番合ったサービスを選択することで、社会はそれなりに我慢することができる。

日本の混雑を解消するのは
たぶん容易なことではない

 日本の抱える混雑問題を考えると、この4方式にはどれも微妙に当てはまらない点こそが問題なのだろう。理想論としては、訪日観光客にだけシンガポール方式を導入して嵐山に向かう列車やバスをすべて片道料金2000円にしてしまう、TDLを入場料1万5000円にする代わりに東京ドームシティは入場料無料で楽しむことができる、といった対応策が想定できるが、それが現実の日本で通用するとは思えない。

 そんなことから私は、新大久保駅は近くても極力使わないようにしている。昔あれほどよく行ったTDLも、もう10年以上出かけていない。つまり「混雑には近寄らない」ということが、日本人にとって一番採用しやすい対策なのかもしれない。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)