◇輸入牛肉を識らずして日本の牛肉は語れない

 日本で食べられる牛肉の6割が輸入牛肉であり、オーストラリア(オージービーフ)と米国(USビーフ)の2強となっている。価格は国産黒毛和牛の5分の1程度だ。

 著者は同2ヵ国とフランスを訪問し、牛の生産現場を見てきた。米国の牛はトウモロコシが主体で育てられるため、日本の牛と味わいが似ている。ただし出荷時の月齢が日本より短いことが多いため、日本よりも味わいが薄い。そのぶん熟成技術が発達してきたようだ。

 一方でオーストラリアでは放牧がメインである。囲いをして水と牧草さえ確保すれば、勝手に大きくなるという恵まれた環境だ。適度な重量に達したら群れで出荷する。1頭にかける手間が日本とまったく違うため、安くても採算が取れる。

 フランスの特徴はシャルキュトリ(加工肉)文化が発達しており、すべての部位が売れることである。ただし霜降り肉はまったく人気がない。何回か子を産んだ経産牛が好まれるなど、「肉の上級者」とでもいうべき国だ。

◆本当に美味しい牛肉を食べるために
◇様々な牛の肉を楽しもう

 日本では明治期になって、ようやく牛肉を食べるようになった。そのため欧米より牛肉の選択肢が少ないのが現状だ。牛肉の流通・販売関係者ですら、黒毛やホルスタイン、オージービーフなど、4~5種しか食べたことがないケースがほとんどという。本書で取りあげてきた短角種や褐毛などは、俎上(そじょう)にのぼることすら少ない。

 たしかにマイナー種にも欠点はある。しかし食べた人にアンケートをとると、それぞれの品種にはかならずファンがつく。消費者の動向は価格にも影響する。希少な肉牛は私たちが応援していくべきである。

◇食肉格付けの時代を終わらせよう

 日本では格付けが、価格を決める唯一のもの差しになっている。歩留まりがよくてサシがつきやすい牛のみが、高値で取引されている。だがそれはかならずしも美味しさに直結していない。

 流通業者や精肉店が格付けを超えて、一定の価格で買い支えるようにすればいいという声もある。短角牛などの赤身肉を、独自のもの差しで評価する「共励会」という取り組みも始まった。混乱期の今だからこそ、新たな指標が求められている。