国内製薬最大手の武田薬品工業が、アイルランドのバイオ医薬大手シャイアーの買収を検討している。買収金額は5兆~6兆円規模が想定され、日本企業の海外企業買収で過去最大規模となる。これは単純なM&A(企業の合併・買収)ではなく、“脱日本”への布石になり得る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)
「自社と同じ規模の会社をのみ込むというのか!」。国内製薬大手の幹部は目をむいた。
3月末、国内製薬最大手である武田薬品工業が、アイルランドのバイオ医薬大手シャイアーに対し、「何らかの提案を行うことを検討している」とコメントして買収案件を明らかにし、製薬業界に激震が走った。
シャイアーの全株式取得に掛かる費用はプレミアム(上乗せ額)を含め、5兆~6兆円規模になると想定される。実現すれば、日本企業の海外企業買収額としては、ソフトバンクグループが2016年に英半導体設計アーム・ホールディングスを買収した際の約3兆3000億円を抜き、過去最大となる見通し。
案件が表面化した時点で武田薬品は、「検討はごく初期かつ調査段階であり、現時点においてシャイアーの取締役会に対していかなる提案も行っていない」とし、その後に一部アナリストへ向けてクリストフ・ウェバー社長CEO自ら提案検討の状況を説明した。
16年の世界の医薬品売上高ランキングでシャイアーは22位、武田薬品は17位(下表参照)。17年の順位は暫定だがシャイアーは17位、武田薬品は18位になる。