消費税率の引き上げが
経済の混乱につながった?
消費税の議論が民主党内で大詰めを迎える中で、一部の議員や学者から、「1997年の経験から、消費税を引き上げても、所得税収や法人税収が落ち込むので、財政再建に逆行する」という議論が出されている。
一定の政治的背景を持った議論であるにしても、客観的事実に基づかない(あるいは意図的に捻じ曲げる)議論は、社会保障・税一体改革を遅らせ、回復基調にあるわが国経済や株式相場に冷や水を浴びせるので、正しい議論を展開すべきである。
まず、識者を代表して、竹中平蔵氏が月刊誌『Voice』3月号で述べている論点を整理すると以下のようなことになる。
「一般会計税収は、97年の消費税引き上げ時に記録した54兆円を一度も上回っていない。このことは、マクロ経済の健全化、デフレ克服が無ければ、増税を行ってもその後の税収は減るという事実が、端的に示されている。」とし、「増税は日本経済をいっそう悪化させる大きなリスクがある」としている。
確かに、97年の一般会計税収は、所得税19.2兆円、法人税13.5兆円、消費税9.3兆円、一般会計合計で合計53.9兆円である。そして、10年経過した07年の一般会計税収は、所得税16.1兆円、法人税14.7兆円、消費税10.3兆円、合計51.0兆円となっており、97年と比べると税収は2.9兆円ほど落ち込んでいる(表)。