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カイゼン!思考力

あの件ははっきり覚えているよ――記憶の捏造

嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]
【最終回】 2012年3月30日
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陥りがちな思考の罠に迫る「カイゼン!思考力」。今回は、「記憶の捏造」を取り上げる。

――問題です

 以下のAさんの問題は何か。AさんとBさんは出版社の編集部で同じ雑誌を担当している同僚である。

A「Bさん、今度の寄稿の件、Cさんを執筆者候補に挙げているけど、彼はやめておいた方がいいと思うな」

B「なぜだい?」

A「このCさんって、トラブルが多いのよ。原稿の内容そのものは悪くないんだけど、原稿提出が締切を大幅にオーバーしたり、相手の許可を得ずに実名でプライベートな発言を引用したりと、何回かてんてこ舞いしたことがあるわ」

B「それはたまたまAさんが担当の時の話じゃないの?」

A「いえ、そんなことはないと思う。まあ、たしかに私自身、彼に痛い目にあわせられたのは間違いないけど。Cさんとのトラブルは本当に記憶に残っているわ」

B「具体的にはどんな感じだったの?」

A「締切オーバーのケースでいえば、週刊Zを担当している時、何度も何度も携帯電話で催促したのに、原稿が来たのが、落ちる(印刷に間に合わなくなってしまう)35分前ということがあったわ。何とか印刷所で作業すませて間一髪セーフだったけど」

B「35分前って、また詳しく覚えてるね」

A「だって、その日は私の30歳の誕生日で、彼氏とデートの予定だったのよ! だからとにかく記憶に残ってるの。印刷所からはどんなに遅くても6時半までしか待てないと言われていて、さすがにそれまでには仕事も済んでいるだろうと思って、7時からレストランの予約をとっていたのに、実際に原稿が来たのは5時55分。ちょうどラジオで大相撲の最終取り組みをやっていたから、記憶に鮮明に残っているの。○○山と△△海の取り組みだったわ。胃が痛くなったせいか、せっかくの食事が全然楽しめなかったな」

B「へえ、すごい記憶力だね。まあ、いずれにせよCさんは避けた方が無難そうだね」

A「それがいいと思う」

 後日。Bさんはたまたまスポーツ雑誌担当のDさんと食事をしていた。そしてたまたま話題は大相撲の話になった。

B「○○山と△△海だと、やはり横綱の○○山の方が大きく勝ち越しているんだろうな」

D「なんだい急に。まあ、たぶんそうだと思うけど、○○山はもう7年前に引退しているから、僕も記憶は定かじゃないな」

B「え、7年前?」

D「そうだよ。○○山が引退したのは20XX年だから。それと入れ替わるように□□里が横綱になった。それは間違いないよ」

B「変だなあ。週刊Zは5年前の創刊のはずだが・・・。Aさんがあれだけ自信もって喋っていた話と辻褄が合わないけど」

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嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社、主に出版、カリキュラム設計、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当する。現在は出版、情報発信を担当。累計120万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」や、「グロービスの実感するMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。
グロービス経営大学院や企業研修においてビジネスプラン、事業創造、管理会計、定量分析、経営戦略、マーケティングなどの講師も務める。また、オンライン経営情報誌 GLOBIS.JPなどで、さまざまな情報発信活動を行っている。


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ビジネスパーソンが日常生活やビジネスの現場で陥りがちな思考の罠。そんな罠になぜ人ははまってしまうのか――。その謎と罠に陥らない方法に迫ります。

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