テレビ朝日の女性記者に対するセクハラ発言問題で、ついに財務省の福田淳一事務次官が辞任に追い込まれた。しかし、辞任に至るまでの経緯を見れば、本人や財務省がこぞって事実関係を否定するなど、悪あがきとも取れる迷走を続けたことは周知の通り。このスキャンダルの舞台裏では、いったい何が起きていたのか。(政界ウォッチャー 大山 糺)

音声データ暴露で“詰んだ”のに…
財務省が福田辞任に反発

セクハラ音声公表でも全否定した財務省と麻生大臣「強気」の裏事情早々に福田辞任を決めた官邸に対して、続投を願った財務省の肩を持った麻生氏。財務省と麻生氏が強気に出た背景には、「官邸寄りのテレ朝だから名乗り出ないだろう」という傲慢な考えがあったようだ 写真:つのだよしお/アフロ

「女性の活躍」を掲げる安倍政権下で発覚した福田前次官のセクハラ問題。スクープを報じたのは4月12日発売の『週刊新潮』で、翌日には同誌のニュースサイトで「胸触っていい?」「手縛っていい?」といった福田氏のセクハラ発言とされる音声データも公開されている。

 もともと福田前次官の女性記者に対する「セクハラ発言」は以前からかなり有名で、財務省内でも「やっと出たね」と言われるほど知られた話。この時点で、すでに“詰み”であり、辞任は避けられないものと思われた。

「実は官邸サイドでも、すぐに福田を辞めさせようという方針を決めていたそうです。それほど福田前次官はセクハラの常習犯だった」(社会部記者)

 16日付の産経新聞が「官邸筋」の情報として「福田財務次官 更迭へ セクハラ疑惑 後任次官を選定」という記事を掲載していた通り、いったんは辞任への道筋が作られたことは間違いない。ところが、ここから事態は混沌とし始める。

 財務省は16日になって、「セクシャル・ハラスメントに該当する発言をしたという認識はない」との福田前次官に対する聴取結果を公表。加えて、「報道は事実と異なるものであり、私への名誉棄損に当たることから、現在、新潮社を提訴すべく、準備を進めている」として、福田前次官本人も疑惑を否定するコメントを発表した。

「財務省が官邸の意向に反して疑惑の否定に転じたのは、森友問題の影響があったからでしょう。というのも森友問題はいまだ決着のメドが立っておらず、長引けば長引くほど批判が強まるという状況です。そこに次官のセクハラ疑惑が加わっては、財務省の威信は地に落ちてしまう。そこで財務省は森友問題が決着するまでこのセクハラ疑惑も引っ張ろうとしたんです。2つの問題をいっしょくたに処分した方が、まだ傷口が小さくて済むという判断ですね」(同前)