なぜ今『失敗の本質』なのか? 震災以降、国の対応に不満を持った人たちから「『失敗の本質』を読み返すべき!」という声が続々生まれ、30年前の古典が再び脚光を浴びている。また、ソニーをはじめとする日本企業の凋落、グローバル競争で次々と敗れる日本企業の閉塞感を前に、日本人は自らの思考・行動特性について考えざるを得ない状況になっているようだ。なぜ、日本は敗れてしまうのか? その答えこそ、日本軍の組織的敗因を分析した52万部のベストセラー『失敗の本質』に隠されているようだ。この連載では、この難解な名著をやさしく読み解くヒントを紹介する。

『失敗の本質』が予言した現代日本

「平時的状況のもとでは有効かつ順調に機能しえたとしても、危機が生じたときは、大東亜戦争で日本軍が露呈した組織的欠陥を再び表面化させないという保証はない」

 上記は1984年に発刊された、『失敗の本質』の序章からの抜粋です。日本的組織論・戦略論の名著である書籍の言葉は、まるで現代日本を予言していたように聞こえないでしょうか?

失敗の本質~日本軍の組織論的研究』 戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝夫、村井友秀、野中郁次郎・著 左:単行本(ダイヤモンド社) 右:文庫版(中央公論社)

 想定外の変化、突然の危機的状況に対する日本の組織の脆弱さは、私たちが今まさに痛感するところです。名著にズバリ「予言された未来」を現代日本は体験しているかのようです。

 その『失敗の本質』が今、再び脚光を浴びています。同書は初版以降28年間、毎年売れ続けている驚くべきロングセラー書籍ですが、昨年(2011年)は前年比約2倍もの販売数を記録。3・11の大震災後は有識者の記事等にも引用され、改めて多くの注目を集めてきました。

震災後に掲載された、経済評論家の池田信夫氏のブログ記事
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51692957.html

日経ビジネスオンラインの記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110715/221508/?rt=nocnt

 一時は世界市場を席巻した日本製品と日本企業が販売競争に負け、出口の見えない閉塞感と業績失速に苦しむ現状。超円高やエネルギーの問題。私たち日本人を取り巻く環境は、平時的状況ではなく「想定外の変化」を迎えているのです。