古森富士フイルムHD会長1月にキャッシュアウトなしのスキームでゼロックスを統合すると発表する古森富士フイルムHD会長(写真)。4カ月で事態は暗転した Photo by Yoko Suzuki

 “味方”に、2度も裏切られた。5月13日、米ゼロックスは1月に合意した富士フイルムホールディングス(HD)との買収契約を破棄すると発表した。本誌5月19日号では、「ゼロックスは買収差し止めを求め裁判で争っていた大株主カール・アイカーン氏らと、裁判所の買収差し止め仮処分命令が出た直後に和解。だがその2日後に、富士フイルムサイドに復帰した」と報じたが、再度株主側に屈した格好だ。

富士フイルムHDは「ゼロックスには、本件を一方的に契約終了する権利はない。今後訴訟や損害賠償請求も含めた適切な手段を取る」と怒りのコメントを発表した。しかし古森重隆・富士フイルムHD会長と共同で買収契約を進めたゼロックスのジェフ・ジェイコブソンCEOは退任、アイカーン氏が推す新経営陣に入れ替わった。今度ばかりは“逆転”は絶望的だ。

露呈した脇の甘さ

 一連の騒動で明らかになったのは、M&Aに長けていたはずの富士フイルムHDが、この超大型買収に対して見せた脇の甘さである。

 差し止めを認めた判決文では、ゼロックス、富士フイルムHDの取締役の証言、メールの記録等が証拠として開示され、交渉の赤裸々な裏側も明らかになった。