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金融市場異論百出

明暗分かれるドルの地位低下、ユーロシフト

2007年12月13日
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 湾岸協力会議6ヵ国(サウジアラビア、カタール等)は、自国通貨の為替レートを米ドルに固定するペッグを当面維持することで合意した。しかしながら、ドル安に伴う自国通貨安はインフレを押し上げる。ペッグを継続しつつもレートを切り上げる方針の国もある。

 ブラジルのスーパーモデルが出演料をドルではなくユーロにしてくれと要求した、と米マスメディアは自虐的に大きく取り上げていた。ドルの信認低下を表す象徴的な「事件」だった(もっとも、本人は後日、誤報だと否定している)。バーナンキFRB議長やコーン副議長は、米国経済のダウンサイド・リスクを強く警戒する発言を行なっており、しばらくは金融緩和モードを続ける可能性が高い。金利の観点からも各国通貨に対しドル安が進みやすい状況にある。

 ドルの相対的な地位低下を表す現象の一つとして、お札の発行残高の推移も挙げられる。各国の紙幣発行残高(市中流通残高)をドル換算して比較すると、ユーロ紙幣は2006年11月頃からドル紙幣を上回り始めた。今年11月下旬時点で、ドル紙幣は7840億ドルなのに対して、ユーロ紙幣は9480億ドルと圧倒的に上回っている。為替レート(ユーロ高)の影響もあるが、それだけでなく、ユーロ建てで見てもユーロ紙幣は前年比プラス8%前後の伸びを示している。一方、この11月末のドル紙幣は前年比でプラス1.6%という低い伸びにとどまった。ドル紙幣の人気が落ちている。電子決済普及の影響よりも、海外需要の変化のほうが影響としては大きいようだ。

 米財務省などの調査によれば、ドル紙幣の6割前後は海外で保有されている。ロシア、中南米、中東、中国などでのドル紙幣保有額が多い。安全資産としてドル紙幣を持つ人びとが米国外に多くいるわけだ。そういったドル紙幣に対する海外需要はこのところ鈍化している模様である。推測ではあるが、そういった国々でドル紙幣からユーロ紙幣にシフトする人びとが徐々に増えている可能性が考えられる。

 基軸通貨の地位は国際政治力や軍事力にも関連がある。また、ユーロ圏も内部ではさまざまな問題を抱えている。ゆえに、一挙にドルが基軸通貨の座から転がり落ちることはないだろう。ただし、ユーロの相対的な地位は当面は徐々に高まる方向にあると思われる。

 かつてキンドルバーガーは、1920年代に最大の債権国が英国から米国にシフトする過程で国際経済が不安定になったと指摘していた。中長期的な観点で見れば、われわれは不安定な時期に入りつつあるのかもしれない。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)

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