国際自動車(km〈ケイエム〉)は創業100年を超える老舗タクシー会社。タクシー事業、ハイヤー事業、バス事業という3本柱を持ち、整備事業なども展開する。ホスピタリティと社員第一主義に基づき、働きやすい職場環境を提供。自動運転の将来を見据えた準備も怠らない。
国際自動車松本良一 代表取締役社長
首都圏のタクシー業界は、コロナ禍でかつてない打撃を受けた。ドライバー数は6万人から4万8000人まで減少し、車不足が深刻化した。そんな中、業界全体の回復をけん引してきたのが国際自動車だ。
松本良一社長は、「この2年間で、業界全体で約5000人を取り戻しました。当社も年間1000人を採用し、コロナ禍で減った人員の補充は終わりました」と説明する。
同社の強みは、多様な営業形態に対応できる“商品力”にある。迎車無料の「フルクル」に加え、駅やホテル、宴会場などの乗り場需要が根強い東京では、ホテルや大規模宴会場向けに、近くの車に一斉通知が行くドアマン専用アプリ「ノリクル」など“よそにはない商品”が他社との差別化を生んでいるのだ。
社員第一主義で
未経験者を育てる
理念の柱は「社員第一主義」と「ホスピタリティドライビング」。「お客さまの喜びを自分たちの喜びにする」ことを重視する。その象徴的な活動が「路上寝込み者保護」である。飲酒で路上に寝てしまう人を保護し、事故を防ぐ取り組みはこの1年で230人を救い、130人の社員が警察から表彰を受けた。
「三鷹営業所のドライバーが始めた活動が全社に広がり、道路をよく見ることが、事故防止にもつながっています」と松本社長はほほ笑む。
働きやすい職場環境づくりにも積極的だ。業界内で高い労働分配率を誇り、営業所や施設の改善を計画的に実施。総合職では休日を17日増やし、育児時短制度も小学校卒業まで延長した。「退職せず働き続けられる社員が増えています。ベースアップも3年連続で行いました」と松本社長は成果を語る。