トランプと金正恩が12日、シンガポールで米朝首脳会談を行った。両首脳は何を話し合い、何に合意したのか?これから、米国と北朝鮮はどうなっていくのだろうか?(国際関係アナリスト 北野幸伯)
溝が埋まらないまま
開催された米朝首脳会談
まず、これまでの経緯を振り返ってみよう。2017年、北朝鮮は核実験、ミサイル実験を狂ったように繰り返していた。トランプは激怒し、誰もが米朝戦争勃発を恐れていた。
この時期、北朝鮮へのスタンスに関して、世界は2つの陣営に分かれていた。すなわち中国とロシアを中心とする「対話派」と、日本、米国を中心とする「圧力派」だ。
中ロは「前提条件なしの対話」による、北朝鮮核問題の解決を主張していた。一方、圧力派も戦争を欲していたわけではない。圧力派は「非核化前提の対話」を求めていたのだ。
2018年になると、北朝鮮が大きく動いた。
1月1日、金正恩は「韓国と対話する準備がある」と宣言。
1月9日、「南北会談」が再開された。
3月5日、金は訪朝した韓国特使団と会談。
一連の流れを受けて3月8日、とうとう米国も動いた。トランプが「金正恩と会う」と宣言したのだ。事前に何の相談もなかった日本は、衝撃を受ける。確かに唐突ではあったが、実をいうと当然の流れだった。というのも、金は、韓国特使団に「非核化前提の対話をする準備がある」と伝えたからだ。
金が圧力派の条件をのんだので、米朝対話が始まるのは、論理的に当然だったのだ。
トランプのいきなりの動きに慌てた日本だったが、ほどなく落ち着きを取り戻した。この時点で「圧力派」は消滅し、世界中が「対話派」になっている。
しかし今度は、「対話派」の中で意見が2つに割れた。北朝鮮、中国、ロシア、韓国は「段階的非核化」「段階的制裁解除」を主張。一方、日本と米国は「非核化後に制裁解除」を主張した。
4月27日、歴史的な南北首脳会談が開催される。この後、世界の注目は、来るべき米朝首脳会談に移った。ところが、会談が始まるまで両国の溝は埋まらなかった。