CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)の数が2年で50倍に…欧州、特にフランスでは、「幸福経営」の研究や導入の動きが、この数年急速に広がっています。これは、「従業員の幸せが企業や組織に繁栄をもたらす」という考えに基づいた、シリコンバレーに端を発し、最近は日本でも拡大の兆しが見える経営モデルです。本稿では、日本と似て「階層社会で、新しいものや変化に対し慎重」という文化特性を持つ社会であるにもかかわらず、こうした動きが加速するフランスの動向をお伝えします。(Nagata Global Partners代表パートナー、パリ第9大学非常勤講師 永田公彦)

盛り上がるCHOクラブ

 フランスにおけるCHOの数は、3年前のわずか3人から、昨年末には150人と2年で50倍に増えています。CHOは、まさに「幸福経営」を推進する中心人物です。この役職名ではないものの、類似の役割を果たす人を含めると、その数はさらに膨らむといわれています。

CHOクラブを立ち上げたオリヴィエ・トゥサン(写真左)とカトリーヌ・テスタCHOクラブを立ち上げたオリヴィエ・トゥサン(写真左)とカトリーヌ・テスタ

 CHO急増の理由の一つが、筆者も登録するClub des CHO(CHOクラブ)の存在です。オリヴィエ・トゥサン(写真左)、カトリーヌ・テスタ(写真右)とモニカ・ジュアンの3人が、昨年2月に立ちあげたシンクタンクです。設立後、会員数が増え続け、現在約200企業・4万5000人が登録しています。

 内訳を企業規模で見ると大企業60%、中小企業20%、スタートアップ企業20%となっています。その中には、オレンジ、ロレアル、BNPパリバ、アクサ、ミシュラン、カルフール等のCAC40企業(ユーロネクスト・パリ証券取引所に上場されている株式銘柄のうち、時価総額上位40銘柄)や外資系企業も多く含まれ、日系ではソフトバンク・ロボティクス、トヨタファイナンシャルサービスなどが登録しています。

 また、登録者の部署では、人事部門とCSR(企業の社会的責任)部門が、最も多く、それに広報部門、オフィスマネジメント部門が続きます。