テレビドラマ「ブラックペアン」(TBSテレビ)で登場した国産の手術支援ロボットは、リアルの世界で開発が進んでいる。臨床検査機器大手シスメックスがロボット技術を持つ川崎重工業と手を組んで2019年度の発売を目指している。なぜ検査機器メーカーがここで先陣を切るのか――。『週刊ダイヤモンド』7月21日号の第1特集「製薬 電機 IT/医療産業エリート大争奪戦」の拡大版として、産業のキーマンたちのインタビューを特別連載でお届けする。第10回はシスメックスの浅野薫CTOに聞く。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)

――国産初となる手術支援ロボットを2019年度に発売する計画です。今春放映されていたテレビドラマ「ブラックペアン」(TBSテレビ)では、フィクションの国産ロボットが登場していました。

初の国産手術支援ロボット開発を導いた「ジョブズ的思考」浅野薫・シスメックスCTO
Photo by Masato Kato

 ドラマのメーカー名は、第一重工でしたっけ(笑)。

――はい。リアルの世界でも、東京工業大学発ベンチャーのリバーフィールド、シスメックスと川崎重工業による合弁会社メディカロイドがそれぞれ国産を開発している。ドラマでは先行する海外製の装置が大きすぎて子供の手術がうまくできない場面がありました。リアルの医療現場でも、小さい体の手術がしやすいものがほしいという声を聞きます。国産はこうした声を反映したコンパクトなものになるんですか。

 はい。そこが“売り”だと思っています。

――ロボットという表現は誇張の部分もあって、ロボットの頭脳となる人工知能(AI)はまだ本格的な活用段階にありません。

 最初に発売するものは今ある「ダヴィンチ」(米インテュイティブ・サージカル製)とそんなに変わらないと思いますが、将来的にはAIも含めていろいろチャレンジしていきます。

――自動車の自動運転みたいに、あるいは自動操縦をパイロットがコントロールする航空機のコックピットのようになるイメージですか。

 そんなイメージです。

――手術支援ロボットにしろ、ゲノム医療の網羅的がん遺伝子検査(治療法がなくなったがん患者を対象に、どの遺伝子に異常があり発症したのかを調べ、効く可能性のある薬を見いだすもの)にしろ、新たな参入分野にもかかわらず国内で先頭を走っています。なぜ先手を取れたんですか。

 新しい分野に入る契機は2000年の中央研究所設立です。既存の検査事業は成長を続けていますが、いずれ飽和します。新しい事業が中長期的に必要という考えで会長兼社長の家次(恒)が先頭に立って決断しました。

――設立前から具体的にテーマは決まっていたんですか。