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山崎元のマネー経済の歩き方

個人向け社債ブームにあえて水を差す

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第224回】 2012年5月1日
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 個人向け社債市場が活気づいている。「日本経済新聞」(4月6日、夕刊)によると、昨年度の発行額は1兆6000億円を超えて、前年度の2.3倍に急増したという。

 社債について、筆者は個人的にいささか複雑な気分を持つ。企業が、銀行以外の主体から資金を調達できる道があることは好ましい。日本では、金融債、電電債、電力債といった特定の分野を除いて、これまで社債市場が発達してこなかった。社債市場が活況を呈することはよいことであり、この気持ちにうそはない。

 では、社債の魅力は何か。信用リスクと利回りの異なる銘柄が多数あって、リスクを考えながらだが妙味のある利回りを狙うことができる点だ。だが、同時に、信用リスクと利回りの判断こそが、社債投資の難しさの原因だ。

 一口に個人向けの社債というが、社債の信用リスクと利回りの得失を、はたして、個人投資家が判断できるものだろうか。先の日経の記事に、昨年と今年に発行された個人向け社債の主な銘柄の発行条件が載っている。いずれも5年債で、三菱商事0.56%、丸紅0.7%、ソフトバンク1%、オリックス1.11%といった表面利率が並んでいるが、これらについて、自信を持って判断できる個人投資家が多数いるとは思えない。財務分析マニアのような人がいれば、あるいは独自に判断できるかもしれないが、こんな人が典型的な投資家だというわけではあるまい。

 ちなみに筆者は、現在の信用度合いに関する各社のイメージの順位と利回りの(低さの)順番が「なんとなく」一致するように感じるが、はっきり言ってこれは、頼るには「危ない!」感覚だ。また、各社の利回りの差がこれでいいのかについては判断ができない。

 格付け会社による各社の格付け、さらに日本証券業協会のホームページの格付けマトリックス表などを見て、利回りの見当をつけることはできよう。しかし、困ったことに、格付けそのものは、それを頼るにはあまりに心もとない。発行体から格付け手数料をもらう格付け会社のビジネスモデルに問題があることは、サブプライム問題で嫌というほど明らかになったが、この点は根本的に改善されていない。また、実績から見て、格付けの悪化は、発行体の状況悪化が公知のものとなって、債券の利回りが上昇した後で行われることが多い。これでは格付け会社ではなく、「後付け会社」とでも呼びたくなる。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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