適切に「疑いの目」をもつことの大切さ
唐沢寿明・鈴木保奈美の共演で話題となったドラマ『プライベートバンカー』(テレビ朝日系)で監修者を務めた元国税専門官の著者。経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだ。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

富裕層の家に多発する“売り込み”
相続税調査のときに聞いた話ですが、富裕層の家にはいろいろな“売り込み”が多いそうです。取引のある証券会社や保険会社はもちろん、さまざまな業者の訪問販売も多いそうなのです。
やはり高級住宅街に大きな家をもっている人は、どうしても狙われてしまうのでしょう。
「裕福な人ほど狙われやすい」というデータ
警視庁による犯罪被害者の意識調査によると、裕福(「裕福だと思う」と「やや裕福だと思う」の合計)と回答した人の比率が23.9%であり、これは一般の回答者17.7%よりも高くなっています。
この結果をみても、富裕層の場合は警戒しすぎるくらいでちょうどいいのかもしれません。
「税務署の人が詐欺師かもしれない?」という誤解
ちなみに私は、相続税調査をしたときに「詐欺師」と間違われたことがありました。
初日の聞きとり調査は順調に進んだのですが、後日、相続人である妻から税務署に問い合わせの連絡が入ったのです。
その用件は、「おたくの税務署に、小林さんという職員は本当にいますか?」というものでした。
きちんと身分証明していても疑われる時代
私は税務調査の場で身分証を見せ、名刺をお渡ししていたのですが、それでも念のために確認の電話を入れたようです。
その電話を私につないでもらい、あらためて自分が国税職員であることを、時間をかけてお伝えしました。話を聞くと、高齢者を狙った詐欺を疑っていたそうです。
私が預金口座の情報などを提出してもらったり、財産について聞いたりしたので、不審に思われたのでしょう。
疑う姿勢もまた“自衛”のひとつ
このように心配事をきちんと確認することは、大切なことだと思います。昨今は行政の職員などを名乗って富裕層の自宅を訪ね、詐欺をはたらくケースも出ているようです。
そのようなときに相手を完全に信じるのではなく、多少疑いの目をもつことは、身を守るうえで有効です。
ゆとりと警戒心を両立させる富裕層の姿勢
富裕層の多くは礼儀正しく精神的なゆとりをもっている一方で、常に警戒を怠りません。だからこそ財を成すことができたという側面は、確実にあります。
人を疑いすぎるのも、まったく疑わないのも、どちらも問題でしょう。適度な距離感やバランス感覚をもって人づき合いをすることは、私たちも意識しておきたいものです。