「スクラップ&ビルド」から「長期使用」へ、企業のファシリティマネジメント(以下、FM)戦略は大きく変わりつつある。FMの最新動向について、日本企業のCRE戦略に詳しい日本不動産研究所に聞いた。(取材・文/渡辺賢一)

FMが根付く欧米。背景にあるのは、歴史ある石造りの建造物

 FMの概念は、日本よりも欧米企業でより深く浸透し、その取り組みも洗練されている。その背景にあるのは、「使えるものは、長く大切に使い続ける」という発想だ。

「新築建物に対する選好性が高い日本では、”スクラップ&ビルド”が一般的です。一方、欧米では継続的に維持修繕を行うことで、建物を長く使い続ける傾向にあります。その結果、建物が新築されてから取り壊されるまでの年数は、日本の方が短いのが現状です」

日本不動産研究所
資産ソリューション部
資産活用推進室
倉地真一室長

 そう語るのは、日本不動産研究所 資産ソリューション部 資産活用推進室の倉地真一室長だ。日本は地震などの災害が多く、高温多湿であることも、スクラップ&ビルドを促す要因となっている、と倉地室長は説明する。

「戦後から今日に至るまで、日本では、古くなったビルや工場はスクラップ&ビルドで更新する、というのが当たり前でした。そのため、FMを『社員の生産性向上や省エネ、省スペースなどを促すオフィスマネジメント』ととらえられている側面もあります」(倉地室長)

 これに対し欧米では、設備をしっかりと管理することが、建物の資産価値保全や向上につながるという考え方が根付いている。長期にわたって企業価値を向上させるFMは欠かせない、と認識されているため、FMとCRE(企業不動産)戦略を密接に関連付けて運用している欧米企業も少なくないそうだ。