日本のFM戦略も長期使用にシフト。背景には経済の成熟化がある

 とはいえ、日本でも「CRE戦略の重要性を深く認識している企業では、オフィスマネジメントの枠を超えたFMへの取り組みが着実に広まっている」と同研究所 資産ソリューション部の中島徳克次長は話す。

日本不動産研究所
資産ソリューション部
中島徳克次長

「ここ数年、大手ゼネコンの設備部門で働いていた人材を、企業がFM部門に採用する動きが盛んになっています。それだけFMの重要性に対する日本企業の認識が深まっているということでしょう」(中島次長)

 また、経済の成熟化や人口減少によって企業が稼ぎにくい時代となり、老朽化した建物の取り壊しや新築にかかる費用負担は重くなっている。そこで、保有するビルや工場をできるだけ“長生き”させ、ライフサイクルコストを抑えようとする発想が生まれつつあるという。 

「人間の身体と同じで、建物も適切なメンテナンスをせずに使い続けると、“老い”が速く進みます。寿命の短い建物は何度も建て直しをしなければなりませんから、どうしてもコスト高になってしまう。むしろ計画修繕によって“長生き”させるほうが結果的に安上がり、ということになります」(中島次長)

 建材や工法の進歩で、日本でも100年近い寿命を保てるビルが建てられるようになってきたことも、長期使用へのシフトの一因となっている。

FM戦略の転換。浸透のカギは、施設の維持活用を評価する認証制度

 スクラップ&ビルドから長期使用への転換に関して、「地方自治体が所有する建物など、PRE(公共不動産)の分野でも、計画的なメンテナンスによる長期使用によって、ライフサイクルコストを抑える動きが見られるようになってきています」と倉地室長は指摘する。

「全国の地方自治体が所有する公共施設の多くは、高度経済成長期の1960年代から70年代ごろに建てられたもので、現在、更新時期を迎えています。地方経済の疲弊や人口減少でさらなる財政の縮小が見込まれることを考えると、ライフサイクルコストを抑えていかなければ、将来世代に多額の負担を背負わせることになります」(倉地室長)

 ただし、「定期的に計画修繕をするのが理想だが、現実はまだまだ追いついてきていない」と、中島次長は言う。

「公有財産は毎年、予算を議会に通さなくてはいけない。そのため、概念としては理解をしていても、『壊れてもいないものになぜお金をかけるのか』という考え方を払拭できていないのが現状です」(中島次長)

 これに対し、「私ども日本不動産研究所が日本政策投資銀行と共同で運営する『DBJ Green Building認証』は、優れた機能を備えた新しい建物を評価するというだけでなく、入居者や環境、文化・歴史などへの配慮などがなされている古い建物も評価する仕組みになっています。このような認証制度が建物をより長く使うことの一助になるかもしれません」と、倉地室長は話す。

 ひとつの建物を長く大切に使い続けることは、サステナビリティ(持続可能性)の実現にもつながる。CSR(企業の社会的責任)の観点から見ても有効な取り組みと言えそうだ。